つぶやかなければよかったのに日記7
 クボタ カナ

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2017-03-22 22:23:01

2月○日

話題の土井善晴の「一汁一菜でよいという提案」、読んでないけど、twitterで盛りあがってるようすを見てから、昼ごはんのときの味噌汁はインスタントで済ませがちやったのを、ちゃんとつくってみたりしている。冷蔵庫にあるものでいろいろ組み合わせるのたのしい。きょうは、大根とキャベツ、ベーコンで。ちょこっと残ってたかぼちゃも入れると、ごろごろ具だくさん感が一気に出た。うれしい。あとは、炊きたてごはんと玉子焼き。ほっこり、ああおいし。ぎゅうぎゅう焼きの村井さんが翻訳した「ダメ女たちの世界を変えた奇跡の料理教室」も気になっている。読んでみようかな。ブラウン神父シリーズ、少しずつ読み進めて4冊目「ブラウン神父の秘密」読了。今回は、ブラウン神父が斬る!という感じで、神父の社会批判や宗教観がみえる作品が多く、それがまたよかった。

「あなたがたは自分はこういう陋劣な罪を犯すことはできないとおっしゃる。しかし、あなたがたはこのような陋劣な罪を告白することがおできになりますか」

このブラウン神父の凄まじさよ。名前は伏せるがこの作品のクライマックス、その司祭としての言葉に心震えて圧倒された。

 

2月△日

ナガシの日。春みたいな陽気。お昼ごはんのパンを買いに行く。ちょうど焼きたてのパンを並べているところだったので、迷わず買う。焼きたてのあつあつ、中のソーセージもぷりっぷりで、もちっとしつつも皮はパリッと香ばしいこのパンを、いまこの瞬間に食べずにおくことができますか。いいえ、できません。むしゃむしゃ。さいこうのおいしさ。「ブラウン神父の醜聞」を読み終える。シリーズ最終巻。「痛烈な風刺とユーモア、独特の逆説と警句の世界」まさに各巻の扉にあるとおり。その視点がみつかれば鮮やかに解ける怪奇な謎。“頭の体操”になるかんじ。おもしろい。都筑道夫がなんども読み返すと書いていたの、いろんな意味で肯ける。あいだに他の本を読んだりしていたせいで気が散ったとこもあるので、今度は全巻とおして読みたい。何度も読むほうがおもしろくなりそう。アンディ・ウィアー「火星の人」が届いた。映画化に合わせた新版は上下に分かれているのがいやで、古本で旧版を買った。次はこれを読む。

 

2月□日

いろいろあたらしいことがはじまる準備などでばたばた。気持ちもそわそわ。きょうは休む日と決めて、のんびり読書する。熱々の珈琲とポール・ボキューズのフルーツサンド。マンゴー、キウイ、苺が宝石みたい。前は苺じゃなくてバナナだった。それもおいしかったけど、女王である苺にはかなわない。たのしみにしていた「火星の人」読了。むちゃくちゃおもしろかった!さいこう!何度も声に出して笑った。「絶望的状況から生きて帰れるか」だけのシンプルな物語。生きてるだけで大冒険。そこがいいし、哲学的苦悩とか重苦しくやらないところ、あほなこと言って笑えるのがいい。地球を挙げてひとりの宇宙飛行士を救うなんてことはファンタジー、実際には起こり得ないけれど、それもいい。マーク・ワトニーと結婚したい。

 

2月☆日

きのう、ひさしぶりに行ったアンデルセンでパンを買ったので、サンドイッチを持ってナガシに行く。晩ごはんの残りのポテトサラダを挟んだのと、スクランブルドエッグとハム。うまい。差し入れにいただいた熱々の紅茶がほっこり沁みる。魔法瓶、ほしいなぁ。夜、ロバート・A・ハインライン「月は無慈悲な夜の女王」読み終える。後半怒涛の展開、息するのも忘れて読んだ。ぷはー!おもしろかった。友情を育むはじまりのところからして、最後はそうなる予感してたけど、やっぱりちょっと切ない。その、アメリカ映画っぽい感じ、嫌いじゃない。独立戦争への熱い思い、そのアメリカ的精神、人民の人民による人民のための民主主義への皮肉というぴりりとしたスパイスもよし。ハインラインといえば日本では「夏への扉」だけれど、アメリカでは断然こちらが人気というの、わかる。私もこちらのほうが好き。読みごたえ、ある。これもある意味で青春小説。傑作でした。

 

2月●日

「新刊ももう少し読もう2017」第一弾、キャスリーン・フリン「ダメ女たちの人生を変えた奇跡の料理教室」が届く。一気に読む。ふむ。おもしろかったけど、私は紙おむつ片手に料理することにものすごい拒否感をおぼえてしまう。大切なのはそこではないのだけれど。なるほどとおもうことはたくさんあるけど、自分の生活と乖離しているところがあって、参加者たちに共感しにくいのかもしれない。それでも、読んだあとからずっと、自分が弁当を作るようになった理由とか、母がいままで毎日の料理を作ってくれたこととか、そういうことをぐるぐる考えている。誰かとそういう話をしたくなっている。それで、結局また最初から読み出した。そう、明日の弁当の仕込みもしなければ。煮玉子と茹でブロッコリ。メインのおかずはなんにしよう。

 

2月◆日

さむいかとおもったら、きょうもまた生ぬるい、もやもやした天気。大好きな冬がもうすぐ終わってしまう。苦手な春がやってきてしまう。ロード・ダンセイニ「二壜の調味料」を読む。これ、表題作はどこかで読んだことある。ミステリというより怪奇小噺。“奇妙な味”といわれるやつ。このジャンル、おもしろくないわけじゃないんやけど、こう、がっつり謎解きミステリ欲が充たされないので、あんまり手にとらない。スタンリイ・エリンの「九時から五時までの男」も最後の数編は未読のまま手放した気がする。「二壜の調味料」のなかでは最後の「アテーナーの楯」がいいなとおもった。電車のなかや寝る前など、日々の隙間に読むのがいいかも。日常に怪奇が顔を出す感じで。

 

2月★日

最近のひとのレコードには手を出さないと決めていたのに、うっかりエイミー・ワインハウスを買ってしまったのだが、むちゃくちゃよくて、何度も何度もかけてしまう。BACK TO BLACK。なぜか気持ちが落ち着いて、寝てしまうこともある。あと、さいきん黒柳徹子さんのInstagramをよく見る。ちょっと落ち込んでるときとか疲れているとき、徹子さんのきらきらしている世界の写真とあの長文のコメントを読むと「ウワァ…!」と元気が出てくる。不思議。きのう買った大垣書店限定復刊のイズレイル・ザングウィル「ビッグ・ボウの殺人」を読む。ずっと買いそびれていたやつ。気の利いた皮肉や漫画みたいな登場人物、おもしろいけど、「世界初の密室ミステリ」のほうはどないなってますか、とおもってたら、最後にやられた。おお、まさに先駆的作品。この時代、すでにこういう結末が。すきです。すきです、こういうの。にんまりして、今夜もまたエイミー・ワインハウスをかける。

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クボタ カナ


英国のクラシック・ミステリをこよなく愛する、ナガシの書店員。

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