somewhere その7 神田川の桜、青聲社。バートンとスティーヴンソンの2冊
 絵描き kaoru

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2017-04-23 14:36:57

somewhere その7

 神田川の桜、青聲社。バートンとスティーヴンソンの2冊

 

 夕方、早稲田のお花屋さんでのアルバイトが終わってから、図書館に本を返しに行くので、ちょっと回り道する。水神社の前にかかる駒塚橋を渡る。桜が満開の頃で、たくさんの花見客が橋の上から、写真を撮っていた。

川の左右から下へと突き出して咲く桜は昼も夜もきれいだ。

 

 胸突坂を一歩ずつ登り(本当に胸をつくように急な坂!)、永青文庫の前へ出る。

 

 目白台の図書館へ行く前に、「そうだ、青聲社(せいせいしゃ)に寄ろうか」と思いつく。目白通りの雑司ヶ谷から江戸川橋方面というのは、学習院の側ほどにぎわってはいない。お店もそこまでないし、昔ながらの商店が少し、土地柄おしゃれなお店が少しと、学校や教会の文化施設や公園・・・という感じの閑静な雰囲気のいい通りなのだ。そこに1軒だけ本屋さんがあって、それが青聲社さんなのだ。

(雑司ヶ谷の往来座さん瀬戸さんに聞いたら、もともと雑司ヶ谷の一箱古本市・みちくさ市出身のわめぞグループの店主さんだということらしい。)

 

 青聲社さんは人文系から美術館の図録、児童書まで文系の人間にはバランスの取れて見やすい書棚だとわたしは感じる。

 実は楽しみにしているのが、「わりと多め」と感じる古いもの、骨董たちだ。古書店に少し置いてある、のよりはもうちょっとたくさんある。でもアンティーク屋さんほどではなくてちょうどいい。それから落語のCDがたくさん置いてある。これも結構目立つくらいある。

この日は入口脇の書棚の上に紙もの系の入れ物として置いてあった、取っ手以外がホウロウでできたフライパンを見つけた。白いホウロウで鍋底に花の絵が描いてあってかわいくかなり好みだったが、迷ってこの日はやめにした。

 

 

 児童書棚でなんとヴァージニア・リー・バートンの『せいめいのれきし』を見つけた!やった!お値段も手頃。バートンは絵をお手本にしたい絵描きさんだ。古き良きアメリカの色合いというものがある。ディズニー創世記の頃のメアリー・ブレアなんかもそうだけど、黙って日本人が出せる色合いではない。どこかエキゾチックな、ニューウェイブな印象さえある。

 

 ところで「そんなに好きなら『せいめいのれきし』って最近新しい版も出ていたし新刊書店やAmazonで買えば?」と言われそうなのだが、「古書店で買うことにしている本」がわたしにはあるのだ。値段が安いから(そうでないこともある古書だけど)というわけではなく、例えば古く出版された絵本とか、その1冊の本がたどってきた時間を一緒に感じたいと思う。それはとりわけ児童書に関して感じることが多い気がする。どこかで愛されてきた本。その歴史というのだろうか、そういう「感触」を求めているのかもしれない。

 

 

同じように好きだけど「絶対古書店で買うぞ!」と決めている児童書があって、それは たかどのほうこさんのひとり館に住む紳士が先祖の霊と暮らす『紳士とオバケ氏』(め・ちゃ・く・ちゃ!面白いです)と素朴な昔のアメリカの暮らしが描かれたバーバラ・クーニー『にぐるまひいて』などであったりする。

 

 

 もう1冊、気になる本を児童書棚で見つけた。『子どもの詩の国』という単行本。聞いたことない、見たこともない本だ。でもどことなく存在感がある本。「作者はだれ・・・?」とページをめくって見たら、古い帯が挟まっていた。スティーヴンソン。『宝島』の作者だった。この本、スティーヴンソンが書いた子どものための詩画集(絵は訳者の方)だった。手にとってすぐわかる、とてもいい本だ。子どもに送る詩が日本文と原文と載っていて、素朴な可愛らしい挿絵が絵本のように、でも詩との空間をうまくつくり配置されている。詩であること、大人が子どものために書いた言葉の意味や温度、レイアウト・・それは大人である自分が手に取った時に、なんとも言えない静かで心地よいテンポをくれる。詩を読む時って、心静かになりたい時、どこか遠くへ行きたいとき。そういう時に、待ってくれる空間のあるレイアウトってとても大事だ。そういうことをきちんと考えてつくられているみたい。これもうちに連れて帰りたいと思った。

 

 

レジでお会計をして、手提げの袋を遠慮しようとしたら(レコードみたく小脇に抱えて帰ろうと思った)「結構大きいですよ・・!」と店主さんに言われ、結局袋に入れてもらった。

 

 

 古書店の楽しみってこういうところにある。やっぱり ほん(本)との出会い。今日はどんな棚なのかわからない、古書店の棚。偶然探していた1冊に出会えたり、全然考えていなかったのにすごい求心力でこっちを見てきて気づいたら買って帰っていたりする、偶然の出会い。その古い「もの」感や、手に取るまでのエピソードも、今日出会った1冊の価値になっているんだよね。

 

 

 

 

 

通りを渡り、目白台図書館で本を返す。通りに出てきたら、青聲社の店主さんとすれ違った。コンビニがないこの通りで一番近いスーパーに行くようだった。小雨が降ってきていて、大きな手提げ袋を提げたわたしの前を足早に通り過ぎていった。

 

 

『せいめいのれきし』 作絵・バージニア・リー・バートン 訳・石井桃子 1964年 岩波書店

『子どもの詩の国』 原詩・ロバート・ルイス・スティーブンソン 訳・絵・よしだみどり 1998年 光琳社出版

(この光琳社さんも初めて知った。京都の出版社さんのようです)

青聲社  http://www.kosho.ne.jp/~bunkyo/shop_info.php?shopid=43

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絵描き kaoru


絵描きです。キャンバスにアクリル絵の具で自由な世界を描きます。 お守りの絵や感性で描くポートレートなども描いています。 JCAT NYメンバー。 絵描きになる前の職業は図書館司書。小さい頃から本に囲まれて育ちました。 旅行、コーヒー、食べること、スピリチュアル、自然の多いところが大好き。 埼玉県在住、東京都のわめぞ(早稲田・目白・雑司が谷)エリア、川越が得意です。 京都も大好き。 https://kaoru1984.amebaownd.com http://www.jcatny.com/kaoru-kaoru_painter

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