つぶやかなければよかったのに日記10
 クボタ カナ

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2017-06-29 19:57:45

5月○日

國分功一郎「中動態の世界」をやっと買う。数ページ読んだだけやけど、あぁ…となるおもしろさ。時間かかるやろけど、脳味噌フル回転させて読む。たのしみ。店番中は、アシモフ他編「ビッグ・アップル・ミステリー マンハッタン12の事件」を読む。ニュー・ヨークを舞台にしたミステリのアンソロジー。うち4篇は既読。ネロ・ウルフものを初めて読んだのと、クレイトン・ロースンのマーリニものが読めたのが収穫。しかし、マーリニはシリーズ他の作品とだいぶ雰囲気がちがうので、たのしさ半減。ロスとマーリニは気さくな友人どうしのはずやのに、敬語のせいでロスが弟子みたいになってる。シリーズものは揃えてほしいなぁ。いや、もしかして「帽子から飛び出した死」も敬語なのか?まさか。ソワソワして、さっそく注文する。

 

5月□日

肌寒い日があったりしてしまいそびれていたヒーターやら電気毛布やら冬のもの、とうとう片付けた。いろいろ洗濯して掃除して春らしいシーツに変える。どこにも行かないけど、気持ちのよい休み。こないだ注文したクレイトン・ロースンを待っているけど、まだ届かない。こんなに日数がかかるのはめずらしい。難しい本を読む気にはなれず、かといって、こないだ買った創元推理文庫の眠狂四郎も久生十蘭「魔都」も気分じゃない。宙ぶらりんのまま、光森裕樹の歌集をひらく。「いつの日のいづれの群れにも常にゐし一羽の鳩よ あなた、でしたか」

 

5月△日

ナガシ先で世界探偵小説全集のヘンリー・ウエイド「警察官よ汝を守れ」とジョン・ディクスンカー「死が二人をわかつまで」買う。どちらも帯と月報なしやけど、コレクターじゃないんからだいじょうぶ…と自分に言い聞かす。そして、文句ばかり言ってまたカーを買うのだ。行けなかったみやこめっせの古本まつりの分と思うことにする。夜、「中動態の世界」読了。圧倒的おもしろさだった。高校くらいのときに、外国語を学んではじめて母語について語ることができるのだな、と漠然とおもったこと、おもいだした。「…完了は、時制であるにもかかわらず、態の区分に干渉する…」あー!とおもった。「言語は思考の可能性の条件である」「スピノザは『エチカ』を自由のために書いた」かっこいい。内容はもちろんやけど、私はこのひとの文章自体がすきな気がする。難問を前にしてなお朗らかに明晰さをもって乗り越えていこうとする姿勢に、希望といってもいいような気持ちが湧いてくる。あとがきの最後、長い航海を終えたあとのこの一文、洒落ていて素敵だ。私たちは世界から自由になることはできないが、おもっているよりは自由なのかもしれない。

 

5月☆日

ベーコンエッグと豆腐の味噌汁で朝ごはん。最近は目玉焼きばかり。オリーブオイルを使う。ちょっとだけ蒸して、黄身はやや固まりつつもとろり、表面はさっと白くなるようにしている。読書スランプを抜け出したので、ずんずん読む。クレイトン・ロースン「帽子から飛び出した死」。ちょうおもしろかった!奇術師たちがどんどん出てきて、ミステリ好きのためのネタが散りばめられ、軽快な会話とともに物語は小気味よくすすみ、派手なフィナーレ、解決篇も鮮やかに。すばらしきエンタテイメント。やっぱりロスは敬語なんて遣ってなかった。この雰囲気のほうがうんといい。「首のない女」は文庫で5,000えんもしている…復刊、いや新訳で出して欲しいなァ。J.D.カー「死が二人をわかつまで」。いままで読んだカーのなかで、いちばんすきかも。フェル博士が登場するまでのサスペンスフルな展開、さいこう。どきどきしてあっという間に読んでしまった。ヘンリー・ウエイド「警察官よ汝を守れ」、大傑作やった。派手さはなく、いぶし銀のような作品。渋いラストシーン、うーん…と胸がいっぱいになる。警察ものはあんまりすきじゃないけど、これは別格。プール警部の地道な捜査とその実直なしごとぶり、かっこいい。余韻に浸る。

 

5月●日

ナガシの日。私のなかの空前のパンブームは終わった。これからは、弁当部おにぎり派。圧倒的なおにぎり時代に突入である。日本昔ばなしみたいな特大おにぎりを2個持っていく。具は蕗の葉の梅きんぴらと鮭フレーク&ごま。海苔も巻いておく。海苔ありのおにぎり、いままであんまりしなかったけど、ぴたっとなってるの、うまい。梅やら鮭やらの定番以外にも具材いろいろ考えてみよう。唐揚とか入れてみたい。グリン・ダニエル「ケンブリッジ大学の殺人」いちおう…読了。最後70頁ほど、ものすごい駆け足やけど。私はこれ、全然たのしめなかった。好みじゃない。「陸橋殺人事件」と同じくらいストレスフルやった。小林晋氏の推す本で合わなかったのはじめてだ。こないだみたいに読む本ぜんぶおもしろい日もあれば、こんなはずれの日もあるのだ…

 

5月■日

きょうは鮭弁。焼鮭、小松菜塩炒め、炒り豆腐、煮玉子。おかずのマンネリ化。しかし、弁当の本質はマンネリズムである。帰宅後、ウィルキー・コリンズ「月長石」読了。古典も古典、1868年の作品。最初ちょっとじりじりしたけど、めちゃめちゃおもしろかった。恋もミステリもユーモアも。盛りだくさん!ドニゼッティにオペラ書いてほしい。たのしそうよ。昔の細かい活字で770ページ、夢中で読んでしまった。おもしろいとは聞いてたけど名作でした。まだまだ読んでない名作いっぱいある。うれしい。老執事ベタレッジ、ちょうかわいい。「ロビンソン・クルーソー」おもしろいもんな。読みたくなるなぁ。

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クボタ カナ


英国のクラシック・ミステリをこよなく愛する、ナガシの書店員。

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