somewhere その9 信州の、山と喫茶とお蚕さん。
 絵描き kaoru

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2017-11-09 20:52:18

somewhere その11

 

信州の、山と喫茶とお蚕さん。

 

 

 

 はじめて長野県の諏訪に出かけた。なんと埼玉の高校時代の友人が二人も移住してしまったので、諏訪にご縁ができてしまったのだ。

 

 諏訪大社上社に参拝してから、岡谷に住む友人が迎えに来てくれ、ビーナスラインを登り、霧ヶ峰へ向かう。

 

 

 

 

 

 

 

 ちょうど夕暮れ時になろうとしていた。八島湿原脇のヒュッテみさやまという山小屋を運営しているもう一人の友人が誘ってくれ、車山肩で夕暮れに染まる霧ヶ峰を見た。

 

 

 

 

 

 

 ヒュッテみさやまは山小屋という言葉からは連想できないくらいの素敵な宿で、ジブリの映画に出て来そうな場所だった。氷点下にもなる寒さのために薪ストーブが焚かれ、心のこもった夕食とビジターセンターの方も交えての楽しい夜のおしゃべりを楽しんだ。音楽とコーヒーとともにあるのは山小屋ならではの本の数々。

 

 

 

 

 

 

 1階の食堂(ホール)にも本、2階の寝室の廊下にも大きな本棚がある。ヒュッテみさやまはそんなに古い宿ではないから(今の体制は10年くらい。もともとの歴史は60年ほどあるそう)、時々茶色く焼けた明らかに古い本があるのはどうして?と尋ねたら、小屋番の友人が「古い山の本を集めるのが好きだから」ということだった。「星の王子さま」や宮沢賢治や梨木香歩、松浦弥太郎なんかもあって、そこに植物が飾ってあり、優しくどことなくファンタジックな表情の霧ヶ峰や八島湿原に似合った書棚。

 

 

 

 

 

 

 翌朝は5時に起きて、暗いうちからの湿原散策をした。紅葉も終わり、枯れた枝葉の風景の散策路を歩いていくと、湿原のむこうから霧がバーっと出てきた。谷の底から上がってくるというその霧は当然、音はしないのだが勢いがすごくて、津波のようにあっという間に湿原を覆ってしまおうとしていた。じっと動かずに見ていると冷たい空気が押し寄せてきて、自分たちも霧の中に飲まれた。不思議な光景。霧ヶ峰って名前は本当なんだなあ、と幻想的な自然現象にあっけにとられていた。霧がかかると湿原の縁が見えず、「想像の中でどこまでも広がっているようだね」とみんなで話した。

 

 

 

 

 

 

 美しく、寒い湿原散策からヒュッテに戻ると温かい朝ごはん。小屋番の友人が作ってくれたリンゴの入ったポタージュスープはリンゴの酸味とくるみの香りがおいしかった。

 

 

 

 

 離れがたい山を降り、松本市へと向かう。車をとめて、お昼を取れるお店を探していると洋菓子のマサムラさんの向かいに青い可愛らしいドアの店がある。カフェのようだけど、カレーがあったのでランチにと店内に入る。とっても好みのお店!音楽喫茶something tenderさんという。・・・「なにかやさしいもの」かな? なんて素敵な名前だろう。たくさんの本が詰まった(詰まったと表現したい)本棚が見え、CDも棚にぎっしり。たぬきレコードという「店内レコ屋さん」もあった。カレーのスパイスの香りが漂う。細野晴臣さんの声だなと思っていたら、BGMはYMOの「マルティプライズ」だった。

 

 

 

 

 

 

 お水の代わりに白湯が出てくるのは寒い信州ならではなのだろうか。パクチーののった野菜とひよこ豆のカレーはおいしくてお腹いっぱいになった。それからこれも民芸の街・松本らしさなのだろうか、店内に色々な種類の、センスのいい椅子たちがあった。

 

 

 

 

 

 

お手洗いに行くと、角に小さな椅子があった。ここで隠れて志ん生の「なめくじ長屋』を読むのもいいね。

 

 

 

 

 

 自然食のバイブルと私が思っている東城百合子先生の「自然療法」やお茶など、入り口に脇にたくさんのフライヤーがあるのもいい。・・・そこにいくと街の情報が集まっていて、いい本や音楽を知ることができるっていうのが私の理想の本屋さんやカフェのすがた。インターネットがなかった時代の情報局の役割をしているような、そして居心地のいいお店っていうのにぐっとくる。次に松本に来たときはここでモーニングをとろう。トーストにギー(インドのバターのようなオイル)がつくんだって。

 

 

 

 

 

 松本城や民芸喫茶まるもでコーヒー飲んで、High Five coffeeさんものぞいて友人宅に向かう。

 

 

 

 翌日は岡谷市の岡谷蚕糸博物館へ出かける。実はこの旅の同行の友人が学芸員をやっているのだ。

 

 

 

 

 

 

 製糸についてあまり知識がなかったのだけど、出かけてみるととても興味深かった。岡谷の歴史は製糸業(蚕を育て繭をとることを「養蚕」、その繭から生糸を取り出すことを「製糸」という)と、その機械開発のために工業技術が発展したらしい。この博物館がユニークなのは市営の博物館と民間の会社「宮坂製糸所」がつながっていて、展示部分と実際の繭から糸を取る工場内の作業を同時に見学できるようにしているところ。最初に養蚕の説明と製糸の歴史と展示、次に製糸のために開発された機械とその発展都市としての歴史の展示、工場内を見学してから、企画展へと足を運ぶつくりだ。

 

 

 

 

 

 

大きな製糸機械の前に生糸の束。あの繭がこんな糸になる、やわらかなツヤと重量感。機械がレトロな感じなのもいいね。

 

 

 

 

 

 

 工場では蚕特有の香りがして、ベテラン看板娘のおばあちゃんたちが器用に糸を取っていた。繭に入っていたお蚕さんはどうなるの??と思っていたが、佃煮のような加工食品になるらしい。ほっ。

 

 

 

 

 

 

 組紐の企画展示(「糸を組む」)ではそれぞれの色に染め上げられた絹糸が本当に美しかった!染められると一気に工芸品としての美しさを感じるようになる。展示作品にある東京の組紐の会社・道明さんの組紐はあたらしいデザインに挑戦されたもので、伝統工芸なんだけど今も技術として生きているもの。昔の時代のもの、で終わっているわけではないのだなあと新しい発見をした気分だった。

 祖母の田舎は農家だったけど、その昔母親はお蚕さんを育てているのを見た、と言っていた。今回岡谷蚕糸博物館を見学して「そうだ、養蚕ていう伝統技術が日本にはあったんだ!」と再発見。もちろん高級品なんだけど、生活の中で絹の製品を選ぶということが選択肢に増えた気がする。染めにも興味が湧いた。これから着物や日本の文化から生まれたものを身につけていきたいと思いました。

 

 

※↑ここではニュアンス的にお蚕さんが繭を作り絹糸がつくられること全体を指して「養蚕」と書きましたが、正確には

「養蚕」は、農家などが蚕を育て繭を取ること、「製糸」はその繭から生糸を取り出す作業、さらにその生糸から不純物を取りのぞいて「絹糸」にする作業を「精錬」といい、工程が分かれています。岡谷蚕糸博物館は「製糸」に特化した博物館です。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ヒュッテみさやま

 今年の営業は終了しています。

 1枚目と4枚目の写真はヒュッテみさやま三井氏撮影。素敵な社員を快く使わせてくれてありがとうございました。

 

音楽喫茶something tender

 

岡谷蚕糸博物館

 組紐の展示は1月21日までです。

something tender 本橋さん、岡谷蚕糸博物館 湯川さん 写真をたくさん使用させていただきありがとうございました。

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絵描き kaoru


絵描きです。キャンバスにアクリル絵の具で自由な世界を描きます。 お守りの絵や感性で描くポートレートなども描いています。 JCAT NYメンバー。 絵描きになる前の職業は図書館司書。小さい頃から本に囲まれて育ちました。 旅行、コーヒー、食べること、スピリチュアル、自然の多いところが大好き。 埼玉県在住、東京都のわめぞ(早稲田・目白・雑司が谷)エリア、川越が得意です。 京都も大好き。 https://kaoru1984.amebaownd.com http://www.jcatny.com/kaoru-kaoru_painter

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