あらかじめわかっている快感を得るために常に既に考えている 後篇
【詩人】 素潜り旬

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2018-10-06 22:01:24

最終部

石器時代のセックスにまつわる一族の記憶の改ざんが盛んに行なわれている現在、私たちの歴史の何が正しく、何が間違っているのかがわからなくなっていた。それに、歴史に正しいだの正しくないだのあるのだろうか。私たちがいま、感じていたり、記憶していること、これを歴史と呼んだら、いいのではないか。と、最も危険なやり方で、ワツィの歴史は、いまなお、更新されている。偽史を採用し続けている。石器時代のセックスを考えるだけで私たちの思考は止まってしまうのか、それともセッキス自体が自殺行為であるのか、死の直前に、ある一定の期間をループし続けてしまう現象は、私たちに何をもたらすのか。というか、始まりは何だったのか。もっと、石器時代のセックスについて考えることは、些細なことではなかったか。いまや、私たちは石器時代のセックスを、とんでもないものだと思い込んでいるのではないだろうか。人は誰でも死ぬ。イモータルもいつかはいなくなる。これは自明の理だ。死因は人それぞれであるが、私たちは死の方法が決められているだけに過ぎない。だから、私たちは、それ以外の方法では死ねないのである。石器時代のセックスは、私たちが選ぶことができる最高級の贅沢である。

1 だからなに
これくらいで前置きはいいかしら。と言うのも既に私はなにかのループの中にいるような気がしてならない。石器時代のセックスについて考えているうちに、私は電車の中にいた。石器時代のセックスについて考える事、それがいけないのではない。私たち一族は、日々、石器時代のセックスについて、考えてしまっていたからだ。私たちはセッキスをしてはならない。私たちは、セッキスをすると死んでしまうのだ。私は石器時代のセックスの事ばかりを考えてしまっている。石器時代のセックスを電車の乗客が楽しんでいる。いいなあ、石器時代のセックス。私もしたい。石器時代のセックスについての考え、というより、石器時代のセックスに思いをはせてばかりいる。石器時代のセックスについて考えることをやめたい。石器時代のセックスと思い浮かぶのをやめたい。ループの中にはいない。石器時代のセックスを断ち切るしかないのだ。私は、いますぐにでもセッキスをしてしまおうと思った。早く味わってしまおう。ループに陥る前に。実は、皆ループなんていていなかったのかもしれない。何かを反復しただけに過ぎないのかもしれない。差異もあったし、反復もあった。石器時代にもセックスはあった。しかし、いま、私の周りには誰もおらず、石器時代のセックスができない。熊にしたやつもいたし、腕がもげたやつもいた。腕がもげた彼は恋人と双子であり、姉妹であり、兄弟であった。ループする前のワツィだ。祖先である。近親相姦の一族である。ワツィは。そう思った。これは私が受け継いだ記憶であり、私のものであり、私の記憶ではない。少し時間が経っているので、少し変わっているかもしれない。歴史は歴史なのに、時の流れに弱い。歴史は古くなっていくのだ。そして、歴史は新しくなっていく。歴史は価値観や思想によって変化する。歴史は過去であるがゆえ、記憶であるがゆえ、柔軟なのだ。そして、歴史はいつだって私たちの味方をしてくれる。だから私たちは、安心して前に進める。近親相姦の一族には、一族の誇りがあるのだ。

2 ワツィ
せめて今夜だけは、朝の匂いにたどり着きたくない。だから、石器時代のセックスをする。と決めた。私にそう言わせてしまう石器時代のセックスが少し恐ろしく、少し卑しく感じた。あまいピナッツをかじりながら、何か、生き物が通るのを待った。しかし、どんな生き物も通らなかった。万物が敵となった日は、私にとってこの日が初めてであろう。石器時代のセックスができない。と感じた時、とても不安になった。このまま死ぬまで石器時代のセックスができないのではないか。怖い。そんなの嫌だ。私は、ちょっとばかりパニックになり、気を鎮めるためのマスターベーションをした。ラクになった。犬が通った。ついに。私は、犬に飛びかかった。えげつない表情で犬は逃げたが、私につかまったようだった。私はもはや、私を私として見れないほど、犬に欲情していた。しかし、肝心のペニスが勃たなかった。犬を逃した。


ペニスが勃たないとは、思わなかった。しかし、時が経てば、回復すれば、また、立つはずである。私は朝の匂いにたどり着くまでに石器時代のセックスをするつもりでいたが、次の夜まで待つことにした。朝を夢遊して。

せめて今夜だけは、朝の匂いにたどり着きたくない。だから、石器時代のセックスをする。と決めた。私にそう言わせてしまう石器時代のセックスが少し恐ろしく、少し卑しく感じた。あまいピナッツをかじりながら、何か、生き物が通るのを待った。しかし、どんな生き物も通らなかった。万物が敵となった日は、私にとってこの日が初めてであろう。石器時代のセックスができない。と感じた時、とても不安になった。このまま死ぬまで石器時代のセックスができないのではないか。怖い。そんなの嫌だ。私は、ちょっとばかりパニックになり、気を鎮めるためのマスターベーションをした。ラクになった。犬が通った。ついに。私は、犬に飛びかかった。えげつない表情で犬は逃げたが、私につかまったようだった。私はもはや、私を私として見れないほど、犬に欲情していた。しかし、肝心のペニスが勃たなかった。犬を逃した。

まさか。まさかである。ここか。私はできの悪いジョーク、もしくはありえないくらい奇妙な偶然の右上にいる未確認飛行物体のような表情で、もう一度眠ってみることにした。


せめて今夜だけは、朝の匂いにたどり着きたくない。だから、石器時代のセックスをする。と決めた。私にそう言わせてしまう石器時代のセックスが少し恐ろしく、少し卑しく感じた。あまいピナッツをかじりながら、何か、生き物が通るのを待った。しかし、どんな生き物も通らなかった。万物が敵となった日は、私にとってこの日が初めてであろう。石器時代のセックスができない。と感じた時、とても不安になった。このまま死ぬまで石器時代のセックスができないのではないか。怖い。そんなの嫌だ。私は、ちょっとばかりパニックになり、気を鎮めるためのマスターベーションをした。ラクになった。犬が通った。ついに。私は、犬に飛びかかった。えげつない表情で犬は逃げたが、私につかまったようだった。私はもはや、私を私として見れないほど、犬に欲情していた。しかし、肝心のペニスが勃たなかった。犬を逃した。

7 これを数度繰り返して
一週間が経ったのか、同じ日を何度も繰り返しているのかが、わからなくなっている。私は、もう寝るのをやめてみようと思う。寝ている間の時間で、対策を練れば、何か変わるかもしれない。まずは走り回った。電車。そうだ、私は電車にいた。電車にいた、私が。乗客が沢山いる。この中の誰と、石器時代のセックスをしても構わないとなるとワクワクしたが。誰も、私に近づこうとしなかった。顔がムラムラしていたからである。気味悪がって、誰も近づかない。私は、悔しくなって、誰でもいいから襲ってやろうと思った。犯してやろうと思った。しかし、私はそんなことする勇気がなかった。だから、放尿と脱糞をした。恥をさらして、共感を呼びたかった。ここで何をしてもいい雰囲気を作りたかった。すると皆も、放尿と脱糞をした。あるものは放尿をし、あるものは脱糞をした。放尿と脱糞の因果関係、放尿は脱糞を誘発し、脱糞は放尿なくして終わらない。石器時代のセックスはもしかすると、放尿と脱糞にまみれていたのではないか。これが石器時代のセックスに最も近いのではないか。排泄はいつの時代も変わらない。下から出すだけ。これが性行為に最も近い生理現象であるのではないか。石器時代のセックス。これだ。しかし夜が来た。電車は記憶に流れていく。せめて今夜だけは、朝の匂いにたどり着きたくない。だから、石器時代のセックスをする。と決めた。私にそう言わせてしまう石器時代のセックスが少し恐ろしく、少し卑しく感じた。あまいピナッツをかじりながら、何か、生き物が通るのを待った。しかし、どんな生き物も通らなかった。万物が敵となった日は、私にとってこの日が初めてであろう。石器時代のセックスができない。と感じた時、とても不安になった。このまま死ぬまで石器時代のセックスができないのではないか。怖い。そんなの嫌だ。私は、ちょっとばかりパニックになり、気を鎮めるためのマスターベーションをした。ラクになった。犬が通った。ついに。私は、犬に飛びかかった。えげつない表情で犬は逃げたが、私につかまったようだった。私はもはや、私を私として見れないほど、犬に欲情していた。しかし、肝心のペニスが勃たなかった。犬を逃した。


もはや水とヤるしかなかった。石器時代のセックスは自然崇拝や精霊との魂の交信としての面があったにちがいない。私は水にペニスを突っ込み、ひたすら腰を振り、四、五、いた。精霊が。しごいた。精霊を。そして写生(射精の生き写し)に近づくにつれ、声が聞こえてきた。
「あなたは間違っている。あなたは間違っている。精霊とは石器時代のセックスはしない。それは交信とは言わない。冒涜だ」
「アニミズムは兄もいるし水もある!近親相姦だ!我が一族にふさわしい!セッキス!これがセッキスだ!ドッピュー」


私は朝日をみることにした。石器時代のセックスは、日が昇り、沈むことかもしれない。

10 何事もなかったかのように
せめて今夜だけは、朝の匂いにたどり着きたくない。だから、石器時代のセックスをする。と決めた。私にそう言わせてしまう石器時代のセックスが少し恐ろしく、少し卑しく感じた。あまいピナッツをかじりながら、何か、生き物が通るのを待った。しかし、どんな生き物も通らなかった。万物が敵となった日は、私にとってこの日が初めてであろう。石器時代のセックスができない。と感じた時、とても不安になった。このまま死ぬまで石器時代のセックスができないのではないか。怖い。そんなの嫌だ。私は、ちょっとばかりパニックになり、気を鎮めるためのマスターベーションをした。ラクになった。犬が通った。ついに。私は、犬に飛びかかった。えげつない表情で犬は逃げたが、私につかまったようだった。私はもはや、私を私として見れないほど、犬に欲情していた。しかし、肝心のペニスが勃たなかった。犬を逃した。


最終部 完

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【詩人】素潜り旬


詩人であり、探偵であるが、それ以外の全てでもある。 俳優として瀬々敬久監督の『菊とギロチン』にスリ役で出演。 依頼はこちらまで。sumogurishun@yahoo.co.jp twitter @sumoguri_shun 素潜り旬探偵事務所 (YouTubeドラマ) https://youtu.be/WDi-OIawW-0 映画ブログ 『男の踊り子、映画のような』 http://sumogurishun.hatenablog.jp

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