somewhere その3 10月の夕暮れ、ポポタムに行った
 絵描き kaoru

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2016-10-05 00:47:03

somewhere その3

10月の夕暮れ、ポポタムに行った

 

 

 

 

 

 夕方、修理に出していた皮財布を取りに目白の工房へ行った。

そのついでに、「本でも見よう」と思い、ブックギャラリーポポタムに寄った。

 

 

ポポタムに着いた頃には外はほとんど暗くなっていた。店のなかにはお客さんが一人もいなく、奥のギャラリーも使っていないようで店半分が暗かった。

 

こんばんは。と声をかけて なかに入る。ポポタムはインディペンデントなリトルプレスやアート系のzineやCD、グッズもたくさんあっておもしろい。普通の本もある。『石神井書林 日録』という古書店店主の読み物に興味が惹かれた。

 

 

右手の窓側は児童書の古書のコーナーだった。絵本などが並ぶなかに福音館書店の出していた「おおきなポケット」という雑誌の数号があった。「懐かしい」と思って手に取った。「おおきなポケット」は「たくさんのふしぎ」や「かがくのとも」と一緒に毎月とって読んでいた。

 

手に取った一冊は表紙をなんとなく覚えていた。ひらくと たかどのほうこさんの書いた物語があった。覚えている、これは確かちょっと不気味な話だった。家族がきのこの食べ過ぎできのこのように小さくなってしまうという話だった。次のページはあの漫画家の蛭子さんがこども向けに描いた教訓的な漫画だった、これも覚えていた。こども心に怖かった。

 

わたしはこんなにもはっきりと内容を、というか読んだ感覚を覚えていることに心の底から驚いた。その途端、なんと涙がにじんできたのだった。びっくりした。時間が遅くなっていたし、泣いてるところを店員さんに見られては恥ずかしいので店を出た。

 

 

家に帰り、家族にその話をしていたとき、こらえきれず、わたしはとうとう泣いてしまった。懐かしさと、安心できるところに帰ってきたような安堵感からの涙だった。 小さいころから、わたしは本が友だちだったのだ。友だちがいなかったわけではないが、人の友だちといるよりも自分の世界に静かに浸っているのが好きなわたしには本はいつでも静かにそばにいてくれる最高の友だちだった。どんな時でも本を必ず持って出かけ、緊張したり、ドキドキするようなことが終わると本をひらいて心を落ち着けていた。

 

 

大人になるに連れて、世界は広くなり、様々な人・価値観に触れるようになった。友人たちもそれぞれの道へ進み、何が正しいのか、今自分がいる場所はどこなのだろうか?と迷ってしまうことがたくさんある。それでも自分の足で立ち位置を決め、進んでいかなければならない。そうしたことに近頃の私は少し途方に暮れていた。すべてが静かで平和な世界に逃げてしまいたいとも思っていた。いつまでも同じ場所にいることはできないが、子ども時代の本との時間 ・記憶が、確かな場所がわたしにもあることを思い出させてくれたのだ。

 

 

●ブックギャラリーポポタム http://popotame.net 東京都豊島区 目白と池袋の間、少し歩く

 

●おおきなポケット 福音館書店 1992年から2011年まで刊行された月刊誌 筆者が小学2年の時に発刊、大判の雑誌でワクワクした。ちょっとナンセンスで、佐々木マキやおかべりかの漫画連載がよかったように記憶している。

https://www.fukuinkan.co.jp/magazinedetail.php?maga_id=7

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絵描き kaoru


絵描きです。キャンバスにアクリル絵の具で自由な世界を描きます。 お守りの絵や感性で描くポートレートなども描いています。 JCAT NYメンバー。 絵描きになる前の職業は図書館司書。小さい頃から本に囲まれて育ちました。 旅行、コーヒー、食べること、スピリチュアル、自然の多いところが大好き。 埼玉県在住、東京都のわめぞ(早稲田・目白・雑司が谷)エリア、川越が得意です。 京都も大好き。 https://kaoru1984.amebaownd.com http://www.jcatny.com/kaoru-kaoru_painter

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