1月18日に、僕が待ち望んだ本が出版される。
こだまさんという方が書いた『夫のちんぽが入らない』というタイトルの本。
一足先に、その物語を読む機会を頂いて、早速拝読したものの、そこから感想が中々出てこず時間だけがたってしまった。
この本から受けた感情の起こりに僕のことばが全然追いつかず、ただ呆然として、すごい本を読んだという実感に体を巡って痺れてしまっていたのだろう。
けれど、この本を読み終わって、”届くだろうか”と問われた時に、絶対に答えなくてはならないと思ったからには、少しでも、及ばなくとも、書かなくてはならない。
この物語は”なんだか兄弟みたい”というなんだか愛らしくもある章題の後に、ドキッ、とするような突然の宣言が続く。
”いきなりだが、夫のちんぽが入らない”
飾ることのない、ともすればただ下品に響いてしまうあまりにも真っ直ぐな言葉。
このあけすけな告白に怯みながらも引き込まれてしまった僕は、そこから最後まで頁を繰る手が止めることができなかった。
書かれているのは”私”の話。うまく折り合いのつかない家族との関係、田舎にある閉塞的な空気、大学進学を機に、夫となる人と出会った時の喜びと少しの不安に満ちた恋のような浮遊感、赴任した学校で起こる出来事、そして夫婦の営みと呼ばれるあれこれについて。
”私”が出会う出来事は、決して平坦でのほほんとしたものではない。自分が描くささやかで”普通”な理想と、横たわる現実との隙間でぐらぐらと揺れるような人生だ。
この本は、そんなままならない現実と、自分が出会う事々と、苦しいぐらいに真摯に向き合って言葉にすることで、自分を焼き尽くしてしまいそうな心に滾る想いが書き出されたものではないだろうか。
その為にこれまでの出来事をひとつひとつ検分しながら、ユーモアを交えながら眺めるように描写されていく。
今までおきた喜びに満ちあふれた瞬間も、見なかったことにしておきたいような瞬間も、分け隔てることなく淡々と描かれていく。
それが一体どれほど途方もないことなのか。僕にはわからないけれど、その熱量は文章を読む間中、僕の体を満たしていた。
”私”にこれだけ真摯に向き合うことにより紡がれたこの本は、決して共感を誘う本ではない。
でも、だからこそ、胸に刺さる。ずっと鳴り続ける言葉に出会うことが出来る本だと思う。
この物語は、他の誰でもない”私”の物語なのだ。
こだまさんに言葉があって、良かった。こだまさんの文章に出会えて、本当に良かった。
僕の声も、届くだろうか。
もし届いたなら、この本を手に取って欲しい。
このささやかな祈りにも似た物語が、少しでも多くの人に届きますように。