お願いだから、2つで1つの
ものは同時に落として。

藤野 可織さん

Photo : Takuya Shiraishi   
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第4回手袋は2つ同時に落としてほしい

――手袋が落ちていますね。
藤野 可織さん

藤野暖かくなってきたこの季節になると、よく道に落ちてるんですよねえ。片一方だけ。家の近所でもよく見かけてて、ここ何日かで2つくらい見ました。なんか1つだけ落ちてると悲しくないですか?

――確かに、ちょっと哀愁のようなものは漂いますね。

藤野ペアのものが離れ離れになって、1個だけ落ちてると思うと、なんか悲しくなって。小学生の頃とかは、あんなん見て泣いてたりしたんです。

――感受性が豊かな子やったんですね。

藤野最近はそこまで感性が細やかじゃなくなって、まあどうでもいいんですけど(笑)。

――1個だけ落としよった、くらいのもんですか(笑)。

藤野なんで2つペアに落とさへんねん!と思ったりするくらいのもんなんですけど。でも、未だに心が痛むことは痛みますね。

――なるほど。あ、いい感じに自転車が倒れてる。

藤野ほんとですね。青いドアと赤い自転車と。

藤野 可織さん
――どういう状況でこうなったのか、少し気になります。なんか、この通り、いろいろと面白いですね。

藤野ほんとですね。

――入院中はお散歩したということですが、普段はあまりお散歩とかも行かないんですか。

藤野そうですね、ひきこもりなんです。

――日光も苦手だし。

藤野そうですね。あ、ミカンがなってる。

――ほんとだ。
藤野 可織さん
――ちなみに、鉢は今後増やしていく予定はあるんですか?

藤野もうねえ、置く場所がなくて。けっこう限界で、これ以上は置けないかなっていうところまで来たので。

――じゃあ、お亡くなりになったりしたら入れ替わる感じで。

藤野そうですね。あとは小っちゃいやつは買うかもしれないですね。つい先日、もう買うまうと思ってたのに、すごく小さいやつを買っちゃって。めっちゃ可愛かったんですよ。

――基本的に葉物ばっかりで、花は置かれないんですよね。

藤野はい。花を咲かせようとすると、また別の努力が必要となってくるので。あと、いろんな花が咲いちゃうと、室内なので色合い的にちょっとうるさくなるんちゃうかなーと思って。

戦ったら負けそうな大自然は怖いけど、
手なずけられる観葉植物は好き

――何鉢もあったら、この子が一番かわいいとかあるんですか?

藤野その時々によってマイブームがある感じですね。でもたまに、すべての鉢に関心をなくして、部屋のなかですごく存在感があるのに全然見えていない何週間があったりもして、気づいたら枯れてたってこともあります。

――わ、そうなんですね。

藤野逆に、放置してたら元気になってるやつとかもいます。

――え、放っておいて元気になるやつとかもいるんですか。
会話の内容と関係ないけど、散歩中に出会った人・動物・モノ その3

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藤野はい。かまわれなくなって生き生きしたやつもいるし、ピンチをみつけてもらえなくてそのままダメになるやつもいます。

――へえ、放っておいてガンガン育つとか、そんな逆境に強い子もいるんですねえ。ちなみに、マイブームの周期はどれくらいのサイクルなんですか?

藤野やっぱ、買ってすぐはかわいいですね。

――新しい服買って、うれしくなってよく着るみたいな感じで(笑)。

藤野そうです、そうです。あとは植え替えたすぐとかもかわいいんですけど、植え替えるとだいたいは、いったんしょぼくれてしまうんで。そのときは、一瞬心が離れちゃいますね。誰のせいやねんって話ですけどね。

――植え替えの副作用で、ちょっと弱ってしまうんですね。

藤野そうなんですよ。私がやったのにね、心が離れちゃうという(笑)。ひどい話です。

――枯れた植物にそそられるという側面はあるものの、基本的には生き生きしてるのが好きなんですね。

藤野そうなんですよ。でも、大きなエネルギーを持った大自然は苦手で…。

――もう少し、ご説明いただけますか。

藤野自然が嫌いで、海も山も大嫌いで、そういうところにある木とか草とかって、すごく生き生きしているというか、私からしてみれば生き生きしすぎてて、なんかちょっと限界を超えているというか…(笑)。獰猛な感じがするんですよ。

――迫ってくる感じがするんですね。
会話の内容と関係ないけど、散歩中に出会った人・動物・モノ その4

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藤野そうですね。戦ったら負けるというか、「完全に勝てへんやん、こいつらには」と思わせられるのが恐ろしいですね。でも観葉植物だったら、まあ勝てる気がする。

――あ、手なずけてる感がある、と。

藤野そうですね。なんなら、枯らしてやるぞ、みたいな(笑)。

――私の思いひとつでどうにでもできるし、おまえたちの運命をにぎっているんだぞ、みたいな支配感(笑)。

藤野そうなんですよ。でも、それもかわいそうな話ですし、できるだけ生き生きと育ってほしいと思って愛情はそそいでるんです。つまり、手なずけられる程度の自然は大好きなんです。脅威になるくらいすごいやつは、怖いから嫌いなんです。

――嫌悪の裏返しには、大自然への畏怖みたいなものがあったのですね。

藤野はい。ただ、いま言ったみたいに海とか大嫌いなんですけど、数年前に熊野大学に招いてもらって現地に行ったときに、台風が来てたんですよ。そこで、渡部直己さんが、「台風の海を見に行こう」って言って、いきなり海につれていってくださったんです。

――ちょっと危ない感じですけど、ワクワク感がありますね。

藤野まだ大きなのが来る前くらいの段階だったんですけど、めちゃくちゃ海が荒れてて、その海がすごいよかったんですよね。そのときに、やっぱり自然は怖いけど、面白いなと思いました。

――その面白さって、あえて言葉にするとどういった感じになります?

藤野なんか、植物も動物も言葉で意思疎通ができへんというか、その意思疎通ができへんところが魅力やと思うんですけど、荒れ狂う台風の海を見て、おんなじようなことを思いましたね。こっちの都合も全然考えてくれへんし、それはやっぱ脅威でもあるんですけど、その一方通行なところが面白いかなあと。なんかよく、台風が来ると海とか川とかを見に行く人いるじゃないですか。

――いますよね。危ないからやめとけばいいのに。

藤野そうなんですよ。そういうニュースを聞くたびに、「なんで見に行かはってんろ」と思ったりしてたんですよね。それはまあもちろん、仕事や生活の段取りのためにどうしても様子を知らなアカンかったとか、それぞれいろいろな事情があって見に行かはるんやとは思うんです。その上で、「ああ、なんで…」と。それが、台風の海を実際に見て、あ、やばい、これは見に行く、と感じました。さっきも言ったように、ほとんどの人は必要があって見に行かざるをえないから行ってしまわはるんでしょうけど、その中に、単に見たかったから、という動機の人が万が一いたとしても、もう理解できてしまいます。

――じゃあ、例えば、鴨川が氾濫とかになったら見に行く感じですかね。

藤野そうですね。というか、去年の夏に見に行きました(笑)。7月に大雨が降ったときに。

――すでに行ってるんですね。

藤野大学で前期だけ講師を務めているんですけど、ちょうど最終日で、他の先生方と飲みに行った帰りに、酔っ払って四条大橋の上から川を長いこと覗いてました。濁流、よかったですよ。

藤野 可織さん
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