お願いだから、2つで1つの
ものは同時に落として。

藤野 可織さん

Photo : Takuya Shiraishi   
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第6回大きな壁の前で
小さく写る

子ども用のフリースが落ちていた植え込みがあった角を西に曲がり、一行は堀川通り沿いへ。そこを南に下り、先ほど裏側から見ていた建物の正面玄関をめざす。

――さっき裏側から見てた建物ありませんね(※第5回参照)。

藤野距離的に、もう通り過ぎてるっぽいですよね。

――じゃあ、さっきのこの裏側とかなんかな。あ、こっからアクセスできるんかな(と、まっすぐ伸びた路地を指差す。その先には建物が)。

藤野たぶんそうですね。

――ちょっとだけ攻めてみましょか。
長い路地を入り、おそるおそる中へ

長い路地を入り、おそるおそる中へ

中に入ると、どうやら現役アパートのようで、住人の方もいらっしゃるよう。ということは、勝手に入っていってはいけないということにもなるわけだが、ちょっとだけお邪魔させてもらう。

藤野人はちゃんと住んでおられますね。あ、猫がいた!

――え、どこですか?

藤野あ、逃げちゃった。

どうやら、この奥に猫がいた模様

どうやら、この奥に猫がいた模様

いろいろ興味深い建物だったけど、住んでいる人もおられたので探検心の趣くままに二階に上がっていったりすることがなかったのはもちろん、撮影も控えめにして、早々に引き返す。
路地から堀川通に面した歩道まで戻り、「じゃ、ちょっと来た道を戻る感じでこっちに行きましょうか」という藤野さんの先導に従い一同は右=北に曲がり、少しばかり歩くも、「あ、嘘。こっちですね」すぐに訂正が入り、Uターンする。
今しがた出てきた路地の前を横切る際に目を向けると、先ほど探索した建物の前にこちらを睨むようにお婆さんが立っていた。

――いまのお婆さんカッコよかったですね。仁王立ちみたいにして立ってました。

藤野めっちゃこっちを見てましたね

――あ、僕たちが騒がしくしてたので、もしかしたら追い払いに出てきたのかもしれない。

藤野悪いことしてしまいましたね。

――写真とか撮ってたので、不審者が来たと思われた可能性は低くないですね。実際にそうなったらなったでちょっと大変ですけど、読みものの中身的には追いかけてきてくれたりしたら、それはそれで面白いかなとちょっと思いました。

藤野取っ組み合いをしているのを横で見てるのは好きです(笑)。

――いや、もしそうなったらお詫びの言葉を入れつつ、「実はこちらの女性は芥川賞作家の方で」と藤野さんを前面に出して、なんとか取り入ろうと画策しようと思います。

藤野巻き込まないでくださいよ(笑)。

――「芥川賞」を水戸黄門の印籠的に使って、関係性が修復できて万が一仲良くなれたりしたら、お宅拝見的な展開も見えてくるかなとちょっと思ったりしたんですけど。

藤野私は傍観者の立場を貫きます(笑)。あっこれ好きな壁だ。どうです? よくないですかこの壁。

藤野 可織さん
――うわ、ほんとだ。大きな壁ですね。

藤野入院中の散歩でもここに来たんですけど、この壁いいなと思って写真に撮りました。

――せっかくだし、今日も撮りましょう。

藤野めっちゃ遠くで、ぽつんと立ってていいですか。

カメラマンじゃ、そんな感じでいきましょう!

希望通り、大きな壁の前で小っちゃく写る藤野さん

希望通り、大きな壁の前で小っちゃく写る藤野さん

造花が盛ってある鉢との再開

――入院中にここら辺まで散歩していたということは、30分くらいは歩いてたんですか?

藤野そうですね。けっこう元気になったので、これだったら歩けるわと思って。

――初めての入院はどうでした?

藤野痛かったです。お腹切ったので。

――退屈だったりしませんでしたか?

藤野実はそうでもなくて…。仕事を残してたんで、ベッドの上で泣きながら小説書いてました。

――そうだったんですね(笑)。てか、この建物って、さっき通ったところですね(二階にサボテンがあったところ ※第5回参照)。ぜんぜん気づいてなかったけど、酒屋さんだったんですね。
二階にサボテンがあった酒屋さんの前で

二階にサボテンがあった酒屋さんの前で

上の写真の奥の道から来て、酒屋さんの角を曲がって、ぐるっと一周してきたところで記念撮影。「たぶんね、この辺りだったんですよ。言ってた造花が盛られてる鉢があったのは」という藤野さんの先導により、写真右手の路地に入る。

――この小さな路地、全体的にいい感じですね。キャッチボールしている人がいたりもしてるし。

藤野そうでしょう(と言いながら、ずんずん進む)

藤野 可織さん
――確かに、このあたり軒先に鉢がたくさん置いてありますね。

藤野あ、ありました!

――例の造花が盛られている鉢ですか!?

藤野そうです。

赤、ピンク、白と、色とりどりの造花が盛られた鉢

赤、ピンク、白と、色とりどりの造花が盛られた鉢

――どうですか、再会してみて。

藤野いいですね~。

――植物のとこに造花を盛るって、活花的な感覚なんですかね。

藤野なんでしょうね。謎ですよね。

――でも、確かに、ちょっと面白ですね。

藤野いい感じです。造花の色あせ具合とかもたまらないです。この前見たときは、この藤色の花は咲いてなかったんですよ。

――あ、そしたら色合いがまたおかしなことになってるんですね。

藤野そうです、そうです。カオスな感じになってます。

――青やったら青で合わせたらいいのに、また全然違う色やし(笑)。じゃ、前はその緑と造花だけだったんですね。

藤野そうです。

――藤色の花が出てきて、より一層おかしなことになっちゃった感じですね。

藤野ほんとに(笑)。いやー、みつかってよかった。これを一番お見せしたかったんです。

――目標が達成できて、よかったです(笑)。

藤野造花のよさっていうのがずっといまいちわかんなかったんですけど、仏さんの祠に造花を供えてはるところがあるんですよ。その造花がいまのやつみたいに、すごくいい感じに色あせてて、こうやって見ると造花も悪くないなと、そのときはじめて思いました。

――造花も植物と同様、枯れた感じになってくると藤野さんの琴線に触れると。

藤野造花って、当たり前ですけど作り物だから嘘っぽいじゃないですか。そのファンシーさが嫌やなと思ってたんですけど、色あせてくると、その安っぽさに、急に親しみを持っちゃいました。なんか、愛すべきものに思われてくるというか。

――なるほど。でも、ほんと、みつかってよかったですね。面白い画が撮れました。

藤野よかったです(笑)。

藤野 可織さん
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