とてつもなく眠い、そして疲れた。ぐにゃぐにゃした山道で何とか耐えられているのが現状だ。いったい何時間位運転しているのだろうか?大きいロングのハイエースの後部座席にはタイからの来賓さん達が眠りこけて静かな寝息をたてている。しかし、さっきの高速道路の事は参った。後ろにつけていた車が料金所で横入りをしただの何だのとイチャモンをつけてきたのだ、事もあろうに1車線しかない高速道路で無理やり追越して僕の車の前で急停止したのだ。勿論、後続車はどんどん詰まっていく。大渋滞の大惨事。適当な理由をつけて何とか誤魔化したが、それにしたって非道い目に合った。後続車にも頭を下げるだけで精一杯だった。まだ若かった僕の頭の中はそのジジイに対する怒りで煮えくり返っていたし、先導の車を見失っている。要領の良い方だったらこんな事もうまく収めるんだろうが、この頃の僕はまだこの世の理不尽に慣れていなかった。いやそんな事どうでも良い、そんなこんなで眠いのだ。
道はどんどん狭くなり、舗装の剥がれたアスファルトが目立ってきている。眠りを妨げないようゆっくりと溝を踏まぬように大回りで進む。いったいどれ程進めば良いのかと限界を迎えた頃に目的地に到着した。人里からだいぶ離れた場所にぽっかりと古い屋敷が建っている。一昔前までは道路すら無く、途中からは徒歩で上がっていたそうだ。所要時間6時間、僕はもう限界だった。ちょっと奥の部屋で休んでおいでと言われて泥のように眠った。
目が覚めて気がついた、随分と辺鄙なところに来てしまったようだ。山間にちょっとだけ開けた土地に茅葺(かやぶき)の古民家がポツリと建っている。狭い庭先からは空がまっすぐ目の前に広がって、遠くにうっすらと人里が見える。ここは四国の徳島県三好市東祖谷(いや)、現在では国の重要伝統的建造物群保存地区に指定されている場所。車の助手席に乗っていた人物は東洋文化研究者のアレックス・カー、この茅葺きの古民家の持ち主だ。タイからの来賓はここで古式の演舞などを行う踊り子さんたちだ。家の中ではボランティアのスタッフが慌ただしく働いている。あと少ししたら宴会が始まる。。。
今回はここまで、
「受け継ぐ」は長くなりそうな予感です。やはり文章には慣れていないし、簡潔に書けない。何より、思い出すという行為は本当に色々とあふれ出てきます。夢か現か、自分でも記憶を疑ってしまいます。ヘミングウェイの短編で出てくるあの父親のような歳になってきたのかなと実感します。短編の題となっている”I guess everyting reminds you of something”(何を見ても何かを思い出す)僕には息子はいないけれども、そして悲しみにふけるわけでもないのだけど、この言葉は少年が作った世界で一番短くて素晴らしい小説だったのではないかなと思います。あれ、話がそれてしまった。短編って好きなんですよね。ふふふ。
ではまた。