つぶやかなければよかったのに日記9
 クボタ カナ

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2017-05-27 01:00:54

4月○日

朝から雨が降っていたが、昼にはあがる。パンを買ってナガシに行く。きょうはいつもとちがうバターのパンを買ってみた。ちょっとかたいけど、中心のバターのたっぷり浸み込んだところがじゅわーっとさいこうにうまい。このシンプルなうまさよ。しばらくリピートしよう。店番中にヘンリー・ウエイド「推定相続人」読み終える。なんか、ひさしぶりにミステリ読んだ気がする。おもしろかった!ぜんぜん予備知識なく読んで、それもよかった。淡々とテンポよく進むなかで生まれるサスペンス。洒落てる。ヒッチコックの映画みたい。「死への落下」も買ったので、それもたのしみ。帰宅後、新刊で出たときに買ったままなんとなく読んでいなかった菊地成孔「レクイエムの名手」をなんとなく手に取り、するする読む。氏を熱烈に崇拝していた当時のことなど思い出す。二十代後半の私へのレクイエムでもあり。いまでも好き、大好きやけど。そういえば、誰かに心酔することなくなったなぁ。レクイエスカト・イン・パーセ。

 

4月□日

桜満開、観光客でいっぱいの季節が来た。休憩時間にInstagramを開くと、桜の写真でいっぱい。人混みが苦手だったり、小さいころから馴染んだ近所の桜がいつの間にか観光地として消費されている感じもしんどかったりで、花見には長いこと行ってないけれども、このタイムライン花見はたのしい。桜きれいやなぁ。夜、尾形亀之助「美しい街」読了。少しずつ、眠る前に読んでいた。眠れないまま夜が更けていくときのこと、見慣れた街の夕方の風景、夏の日の窓から見る白い雲、蝉の声、たっぷりの余白に短く書かれる言葉たちは具体的でありながら夢のよう。不穏でありやさしくもあり心地よい。

 

4月△日

すごい風の吹く日。やっと咲いた木蓮がこのあいだの風の強い日に一瞬で散ってしまったので、満開になった木瓜を写真に撮っておく。庭の花が咲くと祖母を思い出す。夜になっても風は収まることなく、ものすごい音がする。こんなすごいのに警報どころか注意報すら出ていない。怖くて眠れないので、机の上の電気スタンドを点けて、音楽をかけたまま寝ることにする。

 

4月☆日

さむくてたまらぬ。のどがいたい。しのびよる風邪の気配。おいしいカレーを食べに行く。おいしくもりもり食べて体ぽかぽか。前はこのカレーのおかげで未遂に終わった。風邪に効くカレーです。「紙の動物園」が遂に文庫化!と慌てて買ってみたけど、なんか薄い。よく見たら、単行本収録作品を分冊化、掲載順も編集しなおしているらしい。なんか、なんか、単行本で買い直そうかな。戦争になる前に会いたいひとに会って、食べたいものを食べて、見たいものを見とかないといけないけど、もう間に合わへんかもしれん。こわいなぁ。久生十蘭の小説に何度も描かれる、戦争を機に不倫中の恋人と別々の船で欧州へ駆け落ちしようとするが、どちらも乗った船は消息を絶つ…というようなふたりのことをなんとなく思ってみたりする。きょうは葛根湯飲んであったかくして眠る。元気になったら、ビール飲みに行こう。

 

4月●日

きのうの晩ごはん、かき揚げをひとつ残しておいたのを天丼弁当にする。タレ、ケンタロウレシピで作ってみて味見したとき、ちょっと味濃いなとおもったけど、時間が経ってごはんと食べたらさいこうやった。ケンタロウ、すごい。ナガシ終わりの成城石井。「京はま一 おつまみ天 春夏」というのを買う。家では飲まないからおつまみじゃないけど。おいしい。あと、飲むヨーグルト。「信州八ヶ岳高原のドリンクヨーグルト」おいしすぎる。飲むヨーグルトの常識をぶち破るうまさ。たくさん買ってしまう。夜、パトリック・バルビエ「カストラートの歴史」読了。前半はちょっとしんどかったけど、後半からおもしろかった。バロック時代のイタリア、すごいな。恋愛とか友情とか酷い中傷とか、イタリア以外の国の反応とか、バロックの終焉とともに忘れ去られる最期とか。ファリネッリのエピソード、すごい。どんな声やったんやろう。聞いてみたいなぁ。

 

4月◆日

休みの日。きょうはどこにも行かず、ざくざく本を読む日。なんにもない休みがないとしんどい。お昼ごはんは、チャーシューと煮玉子、もやしとねぎたっぷりのせたインスタントラーメン。醤油味。ずっとやりたかったやつ。インスタントでやるからいいんよな。おなかいっぱい、大満足。三遊亭圓朝「怪談 牡丹灯籠」読了。こんな痛快な敵討ちの話やったんか!ハラハラドキドキ。おもしろかったー!怪談のとこ、こわい。でも、そこに合理的な説明のつくところ、カーもびっくりのミステリ、文明開化、世は明治でございますな。続いて、ヘンリー・ウエイド「死への落下」読了。これもおもしろかった!ひとひねりが効いてて、英国風皮肉のビターな味わい。バークリーの感じと似ているかもしれんけど、また違う。丹念な警察活動の描写もよい。いわゆる紳士階級、パブリックスクールのスポーツマンシップ的な古き良き英国を体現する警察署長と、それにいらいらする叩き上げの警視のバランスが絶妙。ウエイドの作品、もっと読んでみたい。

 

4月★日

ピアノレッスンの日。秋の発表会で弾く曲が決まる。ショパン。ここしばらくベートーヴェンをやっていたからショパンを弾くと、いままであんまり彼女いたことなくて女心のわからん不器用な男のひとと別れて、恋愛経験豊富で女のひとを喜ばせる引き出しがたくさんある男のひとと付き合うことになりました。ウワァ~たのし~!て感じになる。たぶん、しあわせにはなれないけど。もちろん、むずかしいんやけど。吉田武「呼鈴の科学 電子工作から物理理論へ」読了。理科というか物理的なもの大嫌いで可能な限り避けてきたけど、時間をかけて悪戦苦闘しながらもおもしろく読めた。“第4講―電子が持つ三つの顔”が、いちばん「おお!」てなった。最後の回路の詳細や電子工作のところはちんぷんかんぷん。でも、やってみたらおもしろいんやろうな。明日はナガシ終わりにKYOTOGRAPHIEの展示を観に行く。毎年、行ってみたいなと思いながらもなかなか難しかったけど、今年は行けそう。たのしみだ。

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クボタ カナ


英国のクラシック・ミステリをこよなく愛する、ナガシの書店員。

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