「好きな作家は誰ですか?」と聞かれたら、村上春樹さんと答えます。
好きといっても、人それぞれ度合いがありますね。
「片手で数えられる程度しか読んだことがないけれど、この1冊がすごく好きなんだ」
「村上春樹の作品は全て読んでいて、考察まで行なっている」などなど。
わたしの場合は、正直胸を張って好きと言っていいのかよくわかりません。
そもそもわたしが初めて春樹さんの世界にまともに触れたのは、2年ほど前。
30歳になったばかりの頃だったか。
その頃わたしは色々とひどい目に遭い、人生最大に落ち込んでいた時期でした。
冗談抜きで「もう生きていても仕方がないな、わたしが死んでも誰も悲しまないし」と思い、死んで楽になりたいとすら思っていました。
そんな時、ネットをふらふらと徘徊していたら、村上春樹さんが期間限定で開設していたウェブサイトの話題をニュースサイトか何かで見かけました。
それは、サイトで質問メールを受け付けて、それに春樹さんが答えていき、そのやりとりを載せるものでした。
それまでは何となく(何故かはわからないが)、村上春樹さんの作品は読んでこなかったわたし。
けれどその時はなんとなくだったか、なんだかおもしろそうだと思ったか、ふらりとそのサイトを見にいってみたんです。
すると、質問に対する春樹さんの回答がおもしろい。
優しく、正義感に溢れていて、とぼけたユーモアもあり、繊細な心も垣間見える。
自分の悩みに当てはまるような質問もありました。
気がつけば、どんどん読み進めていたわたしがいました。
救われたんですね。
自分と同じように傷ついている人が、この世界のどこかにはいるんだと。
それをわかってくれる人も、この世界のどこかにはいるんだと。
心の奥の、底の底の方に降りていくと川があって、そこで世界のみんなと繋がっているんだと。
そう思うと、すごく救われた。
それからです、春樹さんの作品を読み始めたのは。
「スプートニクの恋人」から始まり、「1Q84」「海辺のカフカ」「カンガルー日和」「色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年」「ノルウェイの森」「ねじまき鳥クロニクル」「世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド」「国境の南・太陽の西」「騎士団長殺し」「職業としての小説家」などなど・・・
思い返してみれば、結構読んでるな(笑)
でもね、あんまり詳細のエピソードや登場人物を覚えていないんですよ。
記憶がうすらぼんやりとしている感じ。
だから、どこがどう好きか詳しく説明しろと言われると、正直困ってしまう。
でも、エッセイを読んだりして影響を受けたところはとてもたくさんあります。
ジャズを聴いてみたり(結局あまり合わなかった。ビル・エヴァンスは好き)、ランニングを始めたり、毎日サラダをモリモリ食べるようになったり、裁判の傍聴に行ってみたり、ドーナッツをよく食べるようになったり、猫さんに注目するようになったり。
春樹さんが翻訳している本が課題本だったということもあり、読書会に参加し出したり。
今度などは、偶然の流れではあるけれど、春樹さんの出身地の芦屋に住むことになりました(笑)
春樹さんを好きになってから、人生が上向きになりだしたんです。
人生のターニングポイントのきっかけになった作家さん、ということです。
だから、作品を好きというだけではない、特別な作家さんなんです。
作品から好きになったわけじゃないし、お話の詳細を説明できるわけでもないから、好きな理由を言う時いつもちょっと困るんですね。
このエピソードを話し始めたら長くなるから(笑)
今でも落ち込んだりした時は、あのウェブサイトのやりとりをまとめた本「村上さんのところ」をペラペラと読み返します。
人生のリスタート地点に立ち還れるからかな。
わたしにとって大事な、お守りみたいな本のひとつ。
村上さんのところ
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そういうわけなので、わたしに村上春樹さんのお話をふる時は、「なんだかとにかく村上春樹がまぁちょっと好きな人」くらいにぼんやりと把握しておいてくれればありがたいところです。
内容とは全く関係がない、三日月ゴーヤくん。