めぬけである。
目玉の飛び出た、紅い深海魚である。
そんなグロテスクな生き物から名前を取った、ごくアットホームな同人誌。街で見かけたら、抜け目なく買い求められることをおすすめしたい。なかなか釣り上がらないのだ。
但し、表紙にはそれぞれ異なるプリント写真が貼付されているため、当記事の画像は当てになさらぬよう。一点ものなのだ。
「めぬけ」は東京や京都に縁深い、音楽やアート、それと出版などに携わる30前後の人びとを中心とした、日々の創作をつづる同人誌です。
とある。(表紙袖に)
文芸にせよアート系にせよ、腰低く読者へすり寄る姿勢を見せながら、そのじつ、声高に独りよがりの自己主張を謳い、懐柔せんとする巷のZINE/リトルプレスの類の鼻持ちならぬ「創刊の辞」へ食傷気味のところ、めぬけはこう来た。
軽やかに四回転半くらいしている。目眩がして、何をいっているのかよくわからない。
目次には、画家の鬼頭祈氏や、はまぐちさくらこ氏、6次元のナカムラクニオ氏といった名前がならぶ。イラスト半分、テキスト半分のコンテンツだが、文章量がいずれも過剰にボリューミィのため、いきおい文芸誌ふうの趣きがある。
肌粟立ちものの作品が目白押しだが、ここでは一例、新居大弥氏の川柳を紹介したい。
記念写真うしろの桜のぶんも刷り
くるぶしがなにかの部品に思われて
時雨るれば銀紙のしわ寄りにけり
赤ん坊ときもちわるいほど目が合う
ふと全部わかって自死のかたつむり
…おわかりだろうか。
もっとわかりたい向きの方は、是非お手に取ってじっくり愉しんでいただきたい。
なお、Vol.2が近々発行されると聞いている。風の噂だが、期待値は計り知れない。
因みに、Vol.1のthemeは「すし」であった。