祭場の小火のようなものが、暖かな空気を送り込んでくる。部屋の窓の隙間から、俺の臓器まで入ってくる。樹々が、男根のようにニョキニョキと立ち並び「ありがてえ…」と呟かせてもらったのは、恋人たちが未知に迷わないためでもあるが、どこにも行ってしまえない畏れの、憐れな、鹿殺しの、トナカイ殺しの、マドンナの怨念、つーか、然るべき情念?が、夜の訪れと共に、雨へと変わった。
「先々の皆さん、ドーナツをシロップに浸しましたでしょうか!カルメン!」
茶屋町は茶屋街のようにごった返し、肛門を締めながら歩かないと、エルトポを思い出してしまう。夢から醒めたら、映画は終わっていて、代わりにと言ってはなんだけれど、ドキュメンタリーが始まっていて、撮られていたのは、自分だった、のか。それとも、自分に似た誰かだった、のかは今となってはわからないが、ふやけたスーツを着ていたのは、自分ではない誰かであってほしいと、ここでは願っている自分が映し出されている。こことは、どこであったか。我が家、かもしれない。
妻のYさんが作ってくれたメニューを数日前から思い出していく。ランチョンミート入りのポトフと、骨つき鳥もも肉の香草焼き、ブロッコリーのポタージュ。俺はその全てを聖なるきこりと共に食べていた。俺にしか見えないその人は、小人でもあり、スイッチャーでもあった。過去に戻りたい場合は、その小人の皿をパンでもって綺麗にしてあげること。そしたらすぐに、戻れると過去の経験から知っていた。つまり、いまの俺ではない俺が、何度も、何人も俺に会いに来ていたからである。だから、未来の経験からとも言える。しかし、俺は戻りはしないだろう。人の皿をパンで綺麗にするだなんて、考えられない。俺は、過去を振り返るが、戻ろうだなんて湿っぽいことは思わない。いまが1番力強く、未来はそれを維持した結果の世界である。過去はその道筋でしかない。
「浸したドーナツを口に運びなさい!バフェットも狂おしやかに口周りを汚し、そうしたわ!なんてありがたみに欠ける修辞!しかも、そうしたわ!だってさ。笑」
小人は「メリー・クリスマス!俺の皿をパンで舐めろ」と言う。「さもなくばおまえの性器をちょん切るぞ」と。
俺は、この時、過去を振り返ることに必然性を感じていた。戻ってきたら、クリスマスだ。