日々本に触れていると、ずっと読んでいられる、読んでいたいと思える文章と出会うことがある。
僕にとってそれは、小山田浩子の文章だった。端正で、不穏。リアルなのに、不可思議に歪む世界。それらを支える、ユーモアとリズム感のある文章が頁にぎっしりと並ぶ小説は(事実、彼女の作品は改行をほとんど行わないものが多い。)僕を一息に飲み込んでいった。すごい作家だ。読み終えてすぐにこの感動を溢れ出る言葉そのままに周りに触れまわり、この小説家をずっと追い続けようと心に決めた。
この度刊行された最新刊『庭』は、小山田浩子が初作品集『工場』を刊行後から現在に至るまで、様々な文芸誌に寄稿した短篇・掌篇のほとんどが収録された作品集だ。
彼女の類まれな観察眼で写しとられた世界は解像度が非常に高く、僕たちでは日常の中で見過ごしていたり、気付けずにいた未分の風景が立ち昇ることになる。それは、未知とは決定的に違うものだ。僕たちはその景色を、感覚を知っている。ただ名前を付けるにはあまりに多くの要素が複雑に混ざり合い、それぞれを分かち難い状態で目の前に横たわっている。言葉に置き換えることが難しいだけで。そんな未分化の世界を淡々と言葉で描くことができる小山田浩子は途方もない作家だと読むたびに思う。
今週金曜日、4月6日には心斎橋アセンスで小山田浩子のトークイベントが開催される。
初めて彼女の小説に出会った時からずっと念願だったイベントを実現することができて本当に嬉しい。是非これから更に魅力を増し続ける素晴らしい作家の現在地を見に来てほしい。いや、来てください!
また、刊行記念として小山田浩子選書フェア「ポケットの中の本棚」も同時開催中。
彼女の作品のバックグラウンドの一端を知ることが出来るとても素敵なフェアなので、是非こちらもあわせて見て欲しい。
この選書フェア、もしくは最新刊『庭』を購入いただいた方には、特製小冊子もプレゼント中です。
日 程:2018年4月6日(金)
時 間:開始/18:30~(開場/18:00~)
入場料:通常 1,000円(税込) / 書籍セット 2,000円(税込)
出 演 : 小山田浩子 × 津村記久子
協 賛 : 新潮社
★ トークイベント後、サイン会を予定しております。
『庭』は日々の暮らしの中で、自分自身とその外側の世界との間に生じる違和感やズレを起点にし、見知った筈の日常が変質し、異界へと導かれてしまうような短編小説集です。
リズムの良い文章が類まれな観察眼とユーモア感覚でもって頁を埋め尽くしている。
うねるような言葉の伴流が心地よい小山田作品を読むことは、小説/言葉を読むことの愉しみを知ることと同時に、私たちが生きる今を見つめなおすきっかけを与えてくれます。
今回は対談相手に津村記久子を迎え、作品の魅力や蠢くような言葉が生み出す世界の景色についてお二人にお話いただきます。
皆さま是非ご参加くださいませ。