『あらかじめわかっている快感を得るために常に既に考えている』
素潜り旬
1 ジャングル
この夜の波が、尻の奥から、知りたいという欲求から産まれたのなら、私が手に入れた幾らかの茶葉が、吸い込まれた小人のトランペットの鳴らなさ。の、ような、ものに耳鳴りと同じくらいのスペルマを与えてくれたら、色仕掛けでほてり切ったスーパーマンのマントの赤みくらい、レズビアンのセックスを楽しめるだろう。
「ありがたみに欠ける、バッハ!」
そうだ、そうだとも。私は可視化なんてできない。無機質なアンドロメダのボーイッシュに呼ばれた、どんなふうに?ああ、午後いつ、くらいから、16時か?暗いね。辺りは。
もうダメなんじゃないかと、お、お、思ったよ。祭壇では、ビルマの民団が勝ちを借りあって、負けで支払っている。読んだ?読んでない。今日くらい、読みたいけれど。サンダーバードは明け方の道路を走っていて、私には相変わらず、それが見えない。どうだろうと、どうしようと構わないが、どうでしょうとは言い難い。見えないから。苦しい、レストランで思ったように飯が食えないのは。真っ暗だから、というのもあるが、気づかないうちに12時間も経過していたから、というのもある。つまり、ファミリーレストランというものがあった時代からここにいて、空いていなかったのを知らないくらい、ここにいて、それぞれの店員と、ソワレの主賓、つまり凶徒でいう京都のような場所が、とびっきりの聖戦に、むいていた。ボーイ、ワンダー。
「あ、ぉ、磁気が、こっち」
助けてくれ。というより、授けてくれ。グッと拳に力を入れると、解くのに時間がかかる。これを利用して、冷や水を温水に変える術を身につけた。これで私は、どうにか帰れる。そう、だとしても、待ち受けるのはセカンドレイプに似た愛像を、ドーベルマンに喰わせる映像。あんなの…。
2 愛
ビーフなカルチャーにあらゆるヴァギナを擦り付けてみると、過度に集中したカプサイシンがヘロインのように動脈上を駆け抜け、借金をした黒人が仕方なく手を出した売買のように、アラビアのロレンスのように、アイアンメイデンのような肉棒はラディッシュみたいだ。エヴァーグリーン。なんてエヴァーグリーンなんだ。ここの平和は。欲望とは程遠いが、欲望的なものは渦を巻いていて、菅を菅としてみれば、煙草の煙はどこまで体を抜けるのだろう、吸い込んだ煙はどこに駐留し、消えるのはどこだろう。
「間違ってしまった朝日は、法隆寺を興奮してセックスの場所にして、往々、ブエナビスタ・ソシアルセクシャル。アナルサイエンス」
どれだけ喜べば気がすむのだろう。わからないくらいに喜んだけれど、それは期待していたほどではなく、快感からも程遠く、あらかじめ感知していた快感をそのまま受け取ったに過ぎない。もはや知りすぎてしまった体には要はなく、かなめ、と滑空するひらがなに、
「ブラザー!!気をつけて!!!」
と叫んでも、死んでいたのは希望の足跡だけだった。クッキーの味を、忘れたふりをして、ジャムの味だけを舌に残し、パンを食べた。母が作ってくれた、クリシェ。もうそんな歳かよ。大音量で尾崎紀世彦が流れる部屋で妹のおしっこを飲んだ。いない妹を連れてくるのは、私の得意技だった。妹はいつもその辺にいたし、顔は毎回違っていた。できるだけ母に似ていない子を選び、父の好きそうな子を選んだ。それがなぜか正しいことに思えたからで、そのことを私は、サウンド・オブ・カラーと呼んだ。
いくつになっても軽薄で、模型ひとつ作れなかったが、人体の構造を当てずっぽうで語り、それで女の子を喜ばせることはできた。お互いの乳房をかぶせ、巻きつけながら、肛門に人差し指を突きさし、残りの指で尻の肉を撫でた。中指を入れた方が動かしやすいのはわかっているが、不自由な方が興奮する。明かりをつけて、顔を見ながらするのは吐き気がするほどで目眩もするほどで足が震えるほどで、舌が肉を裏返すように優しく反転した時に、藍液がどんぷりと出たが、お互いにそれは気にしなかった。好きだから。私の子どもの頃の思い出を誘拐してくれるのは、悪の大事な部分に染められたくすぐりに弱いあなた。
3 繊細
美しい舐め方は富だけが知っている。私はさめざめに、トイレに立ち、冒険譚を語る子どものように尿を足した。数秒で終わったが、そんなことはなかったのかもしれない。私は柔らかいトイレットペーパーを舐め、味や舌触りを確認し、それから匂いをかいだ。ピンクの匂いと言われると思い浮かべるのは、トイレットペーパーで、それ以外は思い浮かばない。壇上で凶弾に倒れたあの人のハンカチの匂いは、忘れたと、そう、忘れたのだと、いま、言い聞かせている。
「言ってばかりだ!本当に!」
「暮らしのなかに、言うだなんてありえないのに」
「オン・ザ・マスカット。そこまでにして」
私は誰と話しているのだろう。行ってばかりなのは確かで、言うのをやめたと言うより、言うことをせず、つまり言葉を発さずに、言うという表現をしていたに過ぎないのに。どうしてなのだろう。暗雲が立ち込めたのか、暗礁に乗り上げたのか、暗黒が近づいてきたのかすらわからない暗がりにコートの襟を立てて歩いたのはいいが、寒くはないのですぐやめた。そんな行為の一度、一度が、自分の首を絞めているというのだろうか。都々逸。逸しているのが、半の体。身をすり合わせて、作る、作る。腹の中の子どもは毎秒成長しているのに、私の細胞は毎秒死んでいる。それなのに苦しくない。いやだ。いやだけれど、どんな時も、自ら意識的に細胞を作ることなんてできない。はずだ。
4 ポーズ
しきりに、メンターを探していた。取っ替え引っ替え、メンターを探していた。街を越えることもあったし、電車で遠くに行くこともあったし、夜行バスで隣になった人に教えを請うたりした。暖かい場所でセックスをして、乳首にシンボルをつけた。昼の一番柔らかい時間帯(私の場合は13時だ)に、ジーパンのチャックを下ろし人差し指と中指を入れて、右に二回、左に一回、みだりにもみくちゃにした。そうすれば、あとはどうすればいいか、向こうがわかってくれるからである。そうとも限らないことを知ったのは、12回目の春が来てからで、じゅうぶん楽しんだら違う楽しみ方ができることを知らなかった私が、落ち込めるだけの恋を失ったその時である。
「ひ、ひ、つ、ひみつ」
麻生の世紀末クイズ
デカダンな手紙をシメる時
1 いずれまたお便りします。
2 ちんぽ丼
3 マスクを忘れるな
4 ポーズ
5 始まり
私がどこで何をやっているか。機械をコントロールできないようにしている。それが主な仕事。ホテルは大きくなりだして、モーテルは小さくなった。相対的に。
「あん、あん、違うそうじゃない。深い眠りにつきたいのに」
「ケルベロース。まだ夕方だよ?」
「甘いの。もっと甘いのが欲しい」
「ブンブン。ちょっと待ってくれ」
「あん、あん、手が速い。もっとゆっくり」
「石器時代のセックスって」
「知らなーい」
「ドブン、ドブン」
「セッキス」
「わっはっは」
「アッハハ」
「この通りだ。許してくれ」
「いや」
「セッキス」
「わっはっは」
「いや?」
「セッキス」
「もう」
「泥のように眠りたい」
「固めて?」
「セッキス」
「わっはっは」
「あん、あん、あん」
「ドプン、ドプン」
「セッキス」
6 クセナキス
「あん、あん」
「ドプン、ドプン」
「もうやめて」
「セッキス」
「あはは」
「ドプン、ドプン」
「あは」
「ドプン、ドプン」
「セッキス」
「ドッピュー」
7 始まった
モラルとは何なのか。インモータルと勿体無いが同居して、タイガーになったとか言うんじゃないだろうな!別のものだよ、まったく。腹が減ったからって遠くを見ているのはやめたほうがいいに決まっている。だから、アホだとか、遅れているだとか言われるんだ。何も考えていないふうに見られたり、そんな風雨にうたれたり、どうしようもないね。床を掃いて眠りたい。綺麗にして。とにかく身辺を綺麗にしたいんだ。遠くを見てさ。暖かい気持ちになりたいんだ。夕方水産。そう、そんな感じ。夕方水産。行ったことはないけれど、聞いたことがある。美味しいマリネが食べれるはずだ。スープと、常連だけの真イカのカレーチャーハン。手で食べると褒めてくれるという噂もあるけれど、これは嘘だろう。騙されてみようかなとも思うけれど、きっと誰も得をしないだろうね。カレーは手で食べてもいいけれど、チャーハンは違うね。って誰が決めたんだろう。自分が嫌になる。自分が嫌になる理由はこれだけじゃない。彼女がレズビアンだってわかったんだ。だから…。
「だから何?」
8 せめて
急いで逃げ出したけれど、もう左腕の感覚はなかった。これからこの左腕をどうしていくかは想像がついたし、そのせいで少し吐いたりもした。ただ、私は思い切り相手の腹部を刺して、ボールペンを引き抜き、今度は目を刺した。そしたら腕を掴まれて、あ、引きちぎられたんだった。ということは、あ、もうない。
9 呪い
どんなに過去を巻き戻しても、この腕を持たなかったことにはならないだろう。この腕のやり場に困っている。やってしまったことは仕方がないに決まっているが、後悔が頭から離れない。ちなみに、この歌も。
ベイシティ ナスティ
あんたがこんなにも 文学が
困難のまま ドゥワップ
立って あん あん
行ってしまうのなら レコンキスタ
ベイビー ウォンビン
本物の愛ってやつを カマ
忘れたいから ドプン
遠くに ドプン
連れてってよ セッキス
10 暴力
嫉妬から始まるから、終わりが見えるのであって、そうでなければ大丈夫に決まっている。ひとまず、謝りに行こう。多分、わかってくれるはず。どうだろう。走っていこう。汗をかいていた方が、真剣味が出るから。走ろう。ほら、せ、せい、せい。走るのがこんなに暑いとは、思わなかった。せ。せ、せい。あ、あ、せ、せい。走ったからといって、自分の罪が軽くなるとは思えないけど、この腕の質量は毎歩ごとに軽くなっているけれど、元に戻るといいな。全てが。血が減っているのを感じている。腕の。少しミイラ化しているから。早いね。謝って済むのか。わからなくなってきた。走るのをやめよう。まずは。ポケットからピストルを取り出し、持っている腕に数発ぶち込んだ。かんでもう!とう!とうた!
ぱ!ぴー!とう!悪化!
おん!かんでん」!
もう2発、腕にぶち込んだ。
「待って」
どうしようもなく、責められてもいい。それだけのことをした。だから。いいんだ。どうなっても。
とうた!
おん!あん!あん!おん!
腕に数発ぶち込んだ。おん!あん!
とんた!
おん!
「私の腕…。ズタボオじゃない」
「ズタボオじゃない。ズタボロだ」
街は明るみを残し、二人を残し、
それ以外を耕し、連れ去っていった。
第一部 完
第二部
1 語る
ウクレレを語るサッカー選手の夢を見た。彼の夢はジョニーウィアーと共演することであった。馬鹿げた倒錯をしており、交錯をしていることすら工作している。しかし、夢の中であるがゆえ、加藤浩次が出演しており、スーパーサッカーの撮影中にも見えたが、小学生時代の筆者が登場し、ファミリーサッカーに加藤浩次が来ることを喜んでいたので、やはり夢だなあという感じがする。第2部の前半でいきなり誰も興味がない話を『群像』に応募する小説内でするだなんて、やめた方がいいのだろうけど、書いてしまったのだから仕方がない。さて、では物語に入っていこうではないか。
2 ダーリン
入れなかった。未だ筆者のままである。物語への没入関係は膠着でちんぽの銀次郎が疼いている。もはや筋肉のカリカチュア。カリだけに。笑ってしまうインモータル。つうかイモータル。ああ、ダーリン。ここまで銃で撃たれても大丈夫だとは思わなかった。
と書いても戻れないのはわかっていた。笑ってしまうくらいイモータル。どうやらこのままいくしかないのである。筆者、素潜り旬、やる時はやる男である。あ、でも、今ならいけそう。
3 寒空
ビルの谷間にだけ潜む黴菌の気持ちを考えたことはあるか?もしもAIしか感染しない病があれば、私たちは救うだろうか。もちろん今の私は今までの私ではないし、これから登場するものもすべて今までのものではない。物語は更新され続けるのであり、リンチはされ続けることにより、リンチと化していく。デヴィットリンチがどうかは知らないが、デヴィッドにリンチされ続けるのが、シネフィルであり、輪廻をデヴィッドからデヴィットで終わるのがリンチだとも言える。まさしく、ノー・セイ。いい加減にせい(セイ・ヤー)の世界である。ここが荒廃した世界であるとしても。
あらゆる幸福の場面で音楽が流れているとして、流れていないとも仮定するとしたらあなたの人生はどちらに寄っているのか。何によりたらしめているのか。何に酔っているのか。思想との共依存が人間たらしめているのだとすれば、私を私たらしめているのは、デバイスがとっても利口だから語らずに済んでいるということだろう。デバイスとは思考のことである。もはや、皆そうではないか。アンドロイドが街を闊歩し始め、それを全て駆逐したのが私であるとすれば、私はもうここにはいないが、アンドロイドは街を闊歩していないし、思考はデバイスですらない。これが現代人の矛盾であり、何も起こっていないことを実際に起きていることと仮定して、話を進めてしまう。そんな馬鹿なとおっしゃる気持ちはわかる。しかしそれが現代なのだ。現代とは、いま、であるが、これを読んでいるあなたがいまであるとは限らない。どうやら。
4 聖都
路傍で傘売りの声を聞いた。
「創造は大げさだよ」
5 まさしく
その通りだ。ウィンター。今日はもうここにいろ。グッとこらえて立ち上がれ。野を這う人を見ろ。そうして湧き上がるものに名前をつけてくれ。アインシュタインでもロボコップでもなんでも。しかし、ドクだけはやめてくれ。君を連れて帰れなくなる。ああ、ありがとう。唾を拭いてくれて。これから、5分おきにそうしてくれるかい?ええ、まあ、それならしょうがない。好きにするがいいさ。ふぅう。いい気分だ。まさかしごいてくれるだなんてな。愛情のこもった手は早く致す。ああ、嬉しいねえ。そう、忘れていたが、イモータルについて、考えたことはあるかい?今や、当たり前になってきたけどねえ。はは、私がどうやってなったかって。そんなの聞いてくれるな。うっ、いきなりはやめないでくれ。あ、ああ、ありがとう。唾も拭いてくれたんだな。優しいねえ。感謝するよ。私がなぜ死ななくなったかって?いいや、まだそれがわからんのだよ。だってまだ百歳しか生きておらんからの。まだギリギリ人間の生きる範囲じゃ。うっ、だから急に手を速めんでくれ。死ぬぞ?なんじゃ、いま、急速に歳をとっている気がする。ちょっと待ってくれ。ああ、唾はいい。もうそのままにしといてくれ。ああ、もうやめてくれ。出るんじゃ。くそう、出るんじゃ。やめてくれ。う、う、嘘じゃない。ふたりの愛のインモータルは。う、イモータルは。どうして、そうじゃない。
「ドプン」
6 すべては突然に
私がまだ小学生の頃だ。ある日、魔が差して、ファッションヘルスアンドウェルネスのお嬢さんに恋をしてしまった。それからは毎日ついていった。それは選挙権がもらえた歳の投票日まで続いた。お嬢さんが選挙会場の小学校へ出向いた時、私はそこへ入れなかった。アナーキストだからである。私はアナーキストだから、投票しなかった。アナーキストが投票するなんて、笑えるではないか。それだけの理由でお嬢さんを追うのをやめた。失望したのかもしれない。自分の熱い恋がプライドに勝てなかったことに。そして私は二度とお嬢さんを見ることはなかった。そして孤独なアナーキストは、特にアナーキズムの文献を読むではなく、恋についての甘ったるい詩を書いていた。これではアナーキストではなく、詩人ではないか。そう思った矢先、詩集を出版してみないかと声をかけられたのである。わるいやつに。
7 ビッグリバー
私は、セブン・トゥエルブ・マニエリズムという弱小出版社に1万円払い、170ページもの分厚い詩集を自費出版した。古紙をふんだんに使い、気が触れたかのような懐古趣味地味た装幀やページにアナーキズムをふんだんに剽窃した詩が功を奏し、全国各地のセレクト古書店に置かれた数少ない新刊となり、全国で合わせて40部ほど売れた。いやにリアルであるし、アンリアルとの境目がほぼない。マジカルシンキングにロジカルシンキングを足し、21世紀型リーダーシップを採用した町工場のおじさんがこの詩集を褒めてくれた際には、アナーキズムはやはり地方に受けるのだなと感慨深く、アイスピックをおじさんに渡し、徒党を組んではいけませんよ。とだけ、言っておいた。するとおじさんは、
「負けるな」
とだけ、言い、去っていった。この姿にとてつもなく感銘を受けた私は全国各地で講演会を開き、町工場の方々に詩集を売りさばいた。そしていま、ウィンターという子どもにちんこをしごかれ、急速に歳をとっている。どうしようもなく思考の速度が遅くなり、幼児退行が早まるも、私はこの文章を考えることをやめなかった。やめてどうなるというのだ。私は次のものへ、繋げなければならない。あ、ありがとうウィンター、唾を拭いてくれて。でも、もう拭かなくていいといったじゃないか。しかし、そういえば私はさっき射精し、死んだのではなかったか。それが急に過去を語り、射精する前に戻っている。これはチャンスなのかもしれない。ウィンターの知らない、何かが起こっている。そうだ、そうに違いない。言葉遣いも、いまふうだ。いける。
8 そうしてまた
「石器時代のセックスって知ってるかい?」
ウィンターは手を止めた。私は力ずくでウィンターの背後に回り、ズボンを脱がし、ペニスを挿入した。
「ドプン」
「えす、えす」
「ドプン」
「えす、えす」
「ドプン」
「エストラン」
「え?」
「エストランは、えす、石器時代のセックスに近いの、えす、えす」
「セッキス」
「えす」
「セッキスに決まってるじゃないか」
「エストランはその時代からあって、私たちのようにくっつき合っていた。求めるにしろ、ないにしろ」
「そんなわけはない。エストランが石器時代のセックスに何をもたらしたか、近親相姦的感覚になる誘導体として、機能したか、どうかより、純粋に、石器時代のセックスに純粋という概念があったとしたら、セッキスでいいじゃないか」
「えす、えす」
「はっはっは。壊れてきたかの」
「えす。早くそのちんぽを抜いたほうが身のためですよ」
「なんじゃ、わしの快感はこのままじゃ」
「だって、老化が始まってるではありませんか」
「セッキス」
「えす。もう、無駄ですよ。あなたは、じきに射精します」
「いやじゃ、いやじゃ、いやじゃああ」
「えす。あなたのちんぽにエストラン」
9 ダイ
過去にあるまじき行為をした。だから私はここにいるのかもしれない。それを誰にも告白しなかったから、ここにいるのかもしれない。そうだろ?ウィンター。
「教えてくれ。ウィンター」
「あなたは、なにも」
なにも、なんだというのだ。そしてウィンターは、「」をつけなければ、会話をしてくれない。
「ウィンター。おまえはなんだというのだ」
「詩人に詩の意味を聞くのは、無礼でしょう?」
「それとこれとは違う」
「違わないよ。詩は万物のためにあるんだ」
「だからなんだ」
「詩人は訊ねてはならない」
「じゃあ」
「聴くんだ」
「ウィンター。おまえは」
「いい加減にしてよ」
私はウィンターにそれ以上、なにも聞けなかった。ウィンターが何者かもわからず、どうしようもないまま、時が過ぎ、射精が近づいてきたのだ。
「アナルも触ってくれんか?」
「聴こえたの?」
「まだじゃ」
「じゃあダメ」
唾を拭いてくれたウィンターの顔を舐めながら、射精に到った。
10 詩仙
このままなにも解決に向かわないまま、ウィンターにしごかれ続けるのなんて、まっぴらごめんだ。過去の話をしなくとも戻れるのはわかったし、射精が近づくと老化するのもわかっている。「」を使わなければ、ウィンターと会話ができないことも。ただこの状態はウィンターには感知されず、なにを言っても構わない。だからこの状態をなるべく維持し、射精したくならないように気をそらすしかないが、射精はしごかれている限り、必ず訪れるのだから、早めにケリをつけなければならないが、もはや私に為す術はない。このまま私は永遠にウィンターにちんこをしごかれ続けなければならないのかもしれない。それも悪くはない。過去に戻っているからして、スペルマが打ち切りになることもないだろう。永遠に一回の最上の射精を繰り返している。これは最高の状態とも思えるが、いつか抜け出さなければ、どうにかなってしまうのだろう。それこそ死が待っているのかもしれない。冷静に考えれば、永遠に続くものなんてないとわかっているのだから。
「ウィンター?」
「なに?」
「私はどうしたらいいのだろう」
「愛して欲しいんだ」
「ウィンターを、かい?」
「そうだよ。愛して」
「私が、好きなのかい?」
「それがよくわからないんだ。あなたを知って、こうしていま、こうやっていま、ずっとこうしていたいって思っているんだ。あなたとは常に一度しか会えないけれど、そんなこと、どうでもいいやって、なっちゃうくらい、愛してほしいって気持ちがつよくなっているんだ」
「ウィンター、私は帰らなくてはならないんだ」
「どこに?」
「わからない。ここではない場所ってことは確かだけれど」
「あなたはついさっき、考え始めたんだ。それまで、ずっと一回の射精を繰り返していたんだよ。それが急に考え出しちゃってさ。ま、そのおかげで愛してほしくなっちゃったんだけど」
「そうだったのか。でも、この考えている状態は、決して、悪くはない」
「そうでもないよ。だって、おかしくなったらどうするの?このままいられなくなっちゃうよ。死んじゃうよ」
「ウィンター。心配してくれてありがとう。でも、行かなくちゃならない」
「どこに?なんで?」
「このままじゃダメなんだ。そう思えて仕方がないんだ。」
「それは、強迫性神経症だよ。ここでなおさきゃ」
「しかしのお」
「なおれって考えてごらん」
「あ、本当じゃ」
「出しなよ」
「ウィンター」
第二部 完