先日、住んでいる村の草刈りがあった。
村は10軒ほどの小さな集落で、道路などを別とすれば、共有する財産の管理は自分たちでやっている。
草刈りは今まで参加したことがなかったが、最近草刈り機の練習をして、初参加をした。
そこで大きな発見があった。
草刈りは大変だとみんな文句を言っているから面倒なことかと思っていたが、
草刈り機を使うのは、実は楽しい、ということだ。
ブンブンとバイクのような音を出し、高速回転する刃で次々と草を刈っていく。
草は自分の思うまま、次々となぎ倒されていく。
刈った跡は整然として、きれいになる。
これが快感でないはずがないが、それを今まで全然知らなかった。
どうして誰も教えてくれなかったのだろう。
今は老齢となった祖母を、子どもの僕たちはぶんぶんばあさんと呼んでいたが、
85歳を過ぎても腰が痛いとかなんだかんだ言いながらブンブンやっている。
それはたぶん草刈り機に楽しさがあるからなのだ。
こんな風に一人でやっても楽しい草刈りなのだが、それを集団でやるのも別の面白さがある。
村の草刈りでは、村人たちが公民館に集合して、
公園(という名の不思議な空き地で、春の花見と正月のとんど焼きにしかほぼ利用されていない)に向かう。
公園の直前で、銘々が草刈り機のプラグを引っ張って、ブンブンとエンジンをかけ始める。
刈った草が目に入らないように、サングラスをかけている人もいる。
光を反射して玉虫色に光るやつだ。
そのブンブンと鳴らす刃物を持った集団が公園に入っていく。
その姿を見て「これはまるで暴走族みたいだ」と思った。
もちろん自分には暴走族の経験はないし、バイクにも乗れない。
村の人々も穏やかな人ばかりで、そんなイメージからはほど遠い。
しかしその日は、みんなが草刈り機を持った、バイク乗りたちのようだ。
一人一人は一台の草刈り機を持って孤独だ。
近づきすぎると危険でもある。
その孤独な者たちが集まって、行動する。
でも、それだけではちょっと言い足りない。
彼らは村を混乱させるはみ出し者ではなく、
生い繁った草を刈って村をきれいにするという大事な使命を背負った、どちらかといえばヒーローだ。
だから彼らは、暴走族のような孤独と爽快さを持つ、村のヒーロー。
そして僕もその一員だということが、また面白かった。
公園の草刈りを終えた村人たちは、一人一人公園を後にし、次の仕事場である山の上の堤(ため池)へ向かって行った。