「よく焼けと教わった椎茸をもう薦められている」
「犬に挨拶させようとしているから待っている」
「便座を拭いている段階でノックされている」
「目配せの意図は解らないが頷く」
なんだろう、この本。
毎日の暮らしで起こる困ったことが淡々と言語化されていて、
そのシーンが浮かんできて、ツボにはまって爆笑しちゃう。
あるよなあ、犬が挨拶するのを待っている不思議な時間。
でも、日常をただおもしろがっているだけではなくて、
かっこ悪い状況もおもしろがれる人になれよって言われているような気もしてくる。
違うかな? そう思うことがもう二人の術中にはまっているのかも。
気にとめず通り過ぎることとか、恥ずかしくて誰にも言わないこととかを、
作家のせきしろと芸人の又吉直樹の、
すごい観察力と言語センスで切り取った343ページ。
社会的不器用さん二人の日常がかいま見えて、愛おしい。
たとえば、よく晴れた真夏の1日に、
家から一歩も出ずに何もしなかった罪悪感もちゃらにしてくれそうな本です。
私も今日をおもしろがってみる。
さっき起こったあるあるをひとつ。
「宅急便がくる15分前から着替えて待つ」
どうでしょうか。
せきしろ×又吉直樹『まさかジープで来るとは』(幻冬社、2010年)