「小さな言い訳づくりに忙しい自分」に贈る、臆病なハリネズミの物語
 郁

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2016-08-27 17:33:00

“ハリネズミは窓辺に立ち外を眺めた。霧は消えて雨が降りだしていた。

ぼくはもしかしたら自分が訪問客を望んでいないことを知るためにのみ、だれかに来てほしいのかもしれない、と思った。”

 

 

…さて、色んなことに「はっ」とします。

 

たとえば、「土曜は混んでいるんじゃないか」と言い訳をして歯医者に行かないこと。

たとえば、「一人の時間を楽しみたいから」と外に出ない休日。

たとえば、「今月は2度帰省するから」とスポーツジムの契約を先延ばしにすること。

 

一つひとつは小さくて取るに足りないことだけれど、たくさんのことに小さな言い訳をつけて行動を先送りにしている自分。

 

いや、「小さくて取るに足りないことだ」という考えそれ自体も、小さな言い訳のひとつではないか…。

 

 

「ハリネズミの願い」を読み終え、そんな、見ないようにしていた自分の中の小さな臆病たちを、優しく、外につまみ出された気分です。

 

ストーリーはとても単純。

臆病すぎるほど臆病なハリネズミが、

自分の家に動物たちを招待しようか、しまいか、いやでもやっぱりどうしようか…と思い悩む物語です。

 

こう思われているんじゃないか、こんなことを言われるんじゃないか、

自分のここが原因でみんな話しかけてくれないんじゃないか。

 

一度書いてみた手紙を奥にしまったり、

「来なくても大丈夫」と余計な一言を付け足してしまったり、

家の中でひとり試行錯誤、石橋をたたいて、たたいてたたいて結局のところ渡らない。

 

「そんな想像よくできるな、おい!笑」と心の中で突っ込み、やきもきした気持ちでハリネズミを見守るも、

「あれ、その感覚けっこうわかるぞ?」と自分のいまを省みる。

 

誰だって、ちょっとした言い訳でまだ手をつけられていないことはあるでしょう。

そんな自分をハリネズミに投影させて、「まいったなあ、これ私のことじゃん!」と頭をかき、

本を閉じたあとになんでも良いのでなにかひとつ、腰を上げられたら良いんじゃないでしょうか。

 

 

ところで私は今日、雨の中美容院に行ってきた。

なのでまあ、良しとしよう。

 

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神奈川。東京。仙台。郡山。 誰かが良かったと勧めてくれた本を 「この人はここをどう読んだのかな??」なんて考えながら読んだり、 読んでいる本を「これあの人に勧めたいな~~」 なんて考えたりするのがとても好きです。

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