連載 みどりの本(2) 『ことりのおそうしき』  
【スロウな本屋】 小倉 みゆき

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2016-09-11 16:29:32

「ことりが しんでいました」

 

まだあたたかいことり。でも、心臓は動いていない。

ことりを見つけた子どもたち。

その掌の上で、ことりは次第に冷たく、固くなっていく。

 

絵本の中で、子どもたちはことりを弔う。

穴を掘り、みどりの葉っぱを敷き詰めて、花を手向ける。

そして、二度と飛べなくなったことりのために、お墓の前で、泣きながら歌をうたってやるのだ。

 

小さな生きものの死。

東京の書店で働いていた頃、店の前の路地に猫が倒れていた。すでに固くなっていた。

どうしよう? と途方にくれていたら、まもなく区の担当者が引き取りにきますよ、と

向かいの家の方から、連絡をいただいた。

渋谷区には亡くなったペットを弔う制度があるのだ、と教わった。

 

伊勢の山奥で、知人の田んぼを見せてもらった時のこと。

田んぼを泳ぎ回る、かわいい合鴨たちの一匹が、イタチに襲われて、むごたらしい姿になっていた。

友人のひとりが、スコップを手に黙々と穴を掘り、弔った。

立ちすくむ私たちの前で、「よくあることだよ」と、せいせいとした顔つきで言った。

 

どちらも、すっかり忘れていたことなのに。よみがえる記憶の不思議。

あの時の、なんともいえない気持ちまで想い出した。

私も、歌をうたってあげればよかった。

 

日常に突然おとずれた「死」を、子どもたちは、やさしくおごそかに受けとめる。

重いテーマである「死」を、淡々と、でも、そこに確実にあるものとして描き出す。

 

『ことりのおそうしき』は、かつて『ちいさなとりよ』の題名で、

岩波書店から出版されていたもの。

マーガレット・ワイズ・ブラウンの名作が、新鋭クリスチャン・ロビンソンの絵で、鮮やかによみがえった。

生命の終わりをやさしくみつめる、不朽の名作。

 

『ことりのおそうしき』

マーガレット・ワイズ・ブラウン 文  クリスチャン・ロビンソン 絵  なかがわちひろ 訳  

あすなろ書房 刊    1,512円(税込)

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【スロウな本屋】小倉 みゆき


スロウな本屋(岡山県岡山市) 店主。 スロウな本屋は、「ゆっくりを愉しむ」をコンセプトに、 絵本と暮らしのぐるりの本・もの・コトを揃えた、小さな新刊書店です。 http://slowbooks.jp/

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