命の作りかたと繋ぎかた
【編集者・ライター】 石川 歩

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2016-09-19 00:44:44

叔母の急逝で、代々受け継がれてきた「ぬか床」を管理することになった久美。

ぬか床が呻いて、ぬか床から男の子が出てきて、

最後はカッサンドラと名乗る口と目玉が出てくる。

気持ち悪いと思っているのにぬか床の世話を止められない久美は、

両親の事故死と叔母の急逝の理由が「ぬか床」にあるのではないかと思いはじめる。

そして、叔母の日記に書かれていた故郷の島を訪ねた久美が見たのは、 

深い森の中にある沼で起きていた命の再生だった。

 

主役がぬか床? 

あまりに突拍子もない物語のはじまりに、

なんかすごい本を読みはじめちゃったなあと思う。

それでもどこかで、読み続けたその先に大切な話が待っていそうな予感があって、

読むのを止められない。

 

 

叔母の日記にある言葉が印象的。

「新しい命って、一体何なのだろう。命が新しくなることに、一体、意味なんてあるのかしら。だって命は命でしょう。別に新しくしなくたって、古いままでずっと継承していけばいいのに。新しくしようなんてするから、悲しい別れがあり、面倒な繰り返しがある。古いままでいけば、同じ過ちはいつかは繰り返さなくなるだろうし、年を追うごとに少しは賢くなってゆくだろうものを。」

 

その通りだなあとも思う。

二度と繰り返したくないような悲しい別れを味わうくらいなら、

ずっと変わらない同じものを繰り返していければいいのにと思う。

 

でも、終わりがあるから人はチャレンジし続けるし、

可能性は無限にあると希望を持てるとも思う。

そして、秋のよく晴れた日に朝日を浴びながらコーヒーを飲む時間を、

これ以上の幸せはちょっとないかもなあと思えるのだと思う。

 

 

この本は、命の生まれかたと繋ぎかたをゼロから考え直した物語。

自分のなかに受け継がれている、ずっと続いてきた命について考える機会をくれます。

 

梨木香歩『沼地のある森を抜けて』(新潮社・2011年)

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【編集者・ライター】石川 歩


暮らし・不動産・建築関係の編集者・ライターです。 本と料理とモータースポーツが好き。 よく鼻歌を歌っているねって言われます。 http://www.doyoubi.info/

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