連載 みどりの本(5) 『チロルくんのりんごの木』
【スロウな本屋】 小倉 みゆき

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2016-12-15 16:17:30

 

  ぼくの うまれたところ
  やまが たかく そびえるところ
  ぼくが せかいで いちばん すきなところ

 

チロルくんが住んでいるのは、大きな山々に囲まれた村。りんごの木がたくさんある村。昔から、お祝いのたびに一本ずつりんごの木を植えてきた。あかちゃんが生まれた時。結婚式があった時。そう、りんごの木は「家族の木」。

 

チロルくんは、いつだってギターを抱えている。りんごの木にのぼって、おはよう!って歌う。春が来て、花が谷や山を飾る頃は、花に向かって、せかいでいちばんすきなはる!って歌う。夏に牛を連れて山に行くときは、歌いながらのぼる。牛たちが山から下りてくる秋には、おかえりおかえりってみんなで歌う。静かに雪が降り続く冬、みんなの歌声がちいさくちいさく谷に響く、夜に響く。

 

チロルくんの毎日は、なんて愛おしいんだろう。生まれ育った山の村での日々の営み。季節の移ろい。大好きな幼な馴染みのエーデルちゃん。そして、りんごの木。ずっとずっと昔から続いてきたであろう、かけがえのない日常は、自分たちが大きくなった先も、ずっとずっと続いていく。そのうれしさ。誇らしさ。

 

日常がささやかでも喜びに満ち、いまここにいる自分を肯定できたら、幸せだね。うれしい時、自然と歌を口ずさめる日々は、最高だね。じんわり温かい気持ちでいっぱいになる絵本。りんごの季節に、大人も、子どもも、みんなで愉しんでほしい。

 

『チロルくんのりんごの木』
 荒井良二 作 NHK出版 刊 1728円(税込)

 

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【スロウな本屋】小倉 みゆき


スロウな本屋(岡山県岡山市) 店主。 スロウな本屋は、「ゆっくりを愉しむ」をコンセプトに、 絵本と暮らしのぐるりの本・もの・コトを揃えた、小さな新刊書店です。 http://slowbooks.jp/

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