オリザ流、司馬遼太郎さんへのオマージュあふれる本作。
平田オリザさん著 『下り坂をそろそろと下る』~あたらしい「この国のかたち」~。
『夕暮れの寂しさに歯を食いしばりながら、「明日は晴れか」と小さく呟き、今日も、この坂を下りていこう。』
~『下り坂をそろそろと下る』より~
確実に衰退期に向かっていくわたしたち。
下り坂を下りながらもそこに「ひとすじの光」を創造し、その光を羅針盤に下っていく坂道の先には、細くても長い未来が続いていくのではないか?
香川小豆島の事例など、地域での文化的創造こそがこれからの日本には必要なのだとのオリザさんは記す。
楽しいヒトや仕事との出会い、そこに「おもしろい!」があれば、一旦都会に出たヒトも還ってくる魅力を地方に生み出すことができる。
下り坂に差し掛かった日本の未来、そこにマイナスを見るのではなく、「寂しさ」と向き合いながら共に行きていける道を探すこと。
日本の中での事例、海外と日本の対比などをていねいに説明しながら、当たり前の基準は世界の諸国に寄って変わることも解説。
それぞれの当たり前を受け入れ、折り合いをつけて共に生きていく必要性、それこそが地球に住まう私たちの指針ではないかと。
『 この猜疑心にあふれる社会を、寛容と信頼によって再び編み変えない限り、日本の未来はない 』
~『下り坂をそろそろと下る』より~
いま、この時代にこそ読んでいただきたい作品。
自分自身と周りの人を愛し幸せにし、ヒトの痛みを想像し、一緒に考えることができる自分になれるように、まずわたしができることから始めてみよう!
『下り坂をそろそろと下る』 平田オリザ著 / 講談社現代新書 / 760円(税別)