店を始める時にお菓子も並べようと決めていました。何故ならお菓子が好きだからです。お菓子を食べながら本を読む。本を読みながらお菓子を食べる。こんな幸せなことがあるでしょうか。
さて、お菓子を置くことは決まりましたが、どんなお菓子を置くかで迷いました。はじめは海外のちょっと洒落たお菓子を置こうと思っていました。バター香るクッキーや甘さの広がるチョコレート。色とりどりのゼリイビーンズ。見るも楽しい包装紙に彩られたそれらのお菓子が並ぶ様子をうっとりと思い浮かべました。でも自分がやりたいお店はそういうお店だっただろうか。子どもたちも気軽に入って来る、そんなお店にしたいんじゃなかったろうか。そう思った時、並べるのは駄菓子に決まりました。駄菓子屋みたいな古本屋、それこそが自分が求めたものなのでした。
現在駄菓子は10種類ほど並べています。駄菓子屋さんと言えるような賑やかさとはちと離れていますが、それでもちょこちょこと売れております。
お母さんと来て必ずゼリーを1本買う男の子。遠足のおやつを必死に選ぶ小学生。部活帰りの中学生は店でパクパク食べながら、友達のことゲームのことを喋り合う。いつもはお母さんと一緒なのに初めてひとりでやって来た子は、手のひらの50円玉とにらめっこしながらお菓子を選ぶ。散歩の途中で寄ってくれるおばあちゃんは、施設のみんなに配るためにあれもこれも。(うまい棒は歯がなくても食べられるのだとか!)家に帰ってごはんの準備をする前にちょっと甘いものが欲しくなるのよと仕事帰りの女性。
古本だけだと店に入って来ないような人が、ふらりとやって来てくれる。最近目が悪くなって本を読まないのよと苦笑い。ここなんでこんなに本があるの?と疑問の声。いつもはスマホばかり見ている中学生がふと目にとめた本に手を伸ばす。そんなことも、またここでの日常。
「だがしもあるよ」そんな古本屋なのです。