小説 プルーストの記憶、セザンヌの眼
著 者:ジョナ・レーラー
出版社:白揚社
2000年にノーベル賞を受賞したエリック・カンデルの主宰する研究所で実験技師として働いていた著者が芸術作品の中に見られる、神経学的事象へのアプローチを集め、検証した作品です。
……こう書くとなんともしかつめらしく、特に文系の人間にとっつきにくそうな印象を受けますが、安心してください。
マルセル・プルースト、ジョージ・エリオット等、本好きであれば一度は手に取ったことのある作家についてのセクションから、音楽、絵画、果てはオーギュスト・エスコフィエが追求した食の分野まで。幅広い創作活動に言及し、その作り手がどのような手法で後世に科学的に解明される現象を見つめていたのか、詳しく紹介されています。
また、自分の体に眠る不思議をミステリー小説のようにもSF作品のようにも読み進めていくことができます。(本書に含まれる人体に関する膨大な引用の数々ははScience Fiction ではなくScientific Factですが。)
翻訳も素晴らしく、実はこちら、原題が"Proust was a Neuroscientist"(直訳すると「プルーストは神経科学者であった。」ですよね……)というなんともシンプルなものだったのに対し、純文学好きも思わず手にとってしまう素敵な邦題に変身しています。
科学分野に対する苦手意識がある方にこそ呼んで頂きたい、オススメの一冊です。
※2015年の暮れに行われた、リーダーズ・ネスト2015年チャンピオン大会で、もっとも読みたい本に選ばれた「プルーストの記憶、セザンヌの眼」のおすすめコメントを、Aさんにいただきました!ぜひご一読ください。