小説 『フラニーとゾーイー』
著 者:サリンジャー
世の中には、二種類の人間がいる。
サリンジャーが好きか、嫌いか。
サリンジャーは好みの分かれる作家なのだ。
登場人物が掲げる難解な哲学や、まわりくどいセリフ回し。劇的な変化に欠けるストーリー。
しかし、この作家ほど思春期の感性を作品の細部にまで織り込むことに成功した作家はいないのではないか。
『ライ麦畑で捕まえて』が名高いが、今回私は『フラニーとゾーイー』をおすすめ本に選んだ。
それは、大学生の頃読んでハートに「雷を打たれる」経験をしたからだ。
前置きが長くなってしまったので、作品の紹介に移りたい。
『フラニーとゾーイー』は1950年代後半アメリカ東部のある兄妹(兄:ゾーイー、妹:フラニー)の物語である。
グラース家の7人兄弟の一番下の娘、フラニー(大学生)は、精神的危機を迎えていた。
ボーイフレンド、大学の教授、所属していた演劇部・・・
エゴに囚われた俗世間に我慢がならない彼女は、自分の殻にこもり、「神への祈り」を唱えることで精神的平和を獲得しようとする。
食べ物も食べずにふさぎ込んでいるフラニーを見かねた母親は、
一番年が近い兄ゾーイー(役者)にフラニーの説得をお願いする・・・
このように書くと、かなりエキセントリックな内容のように思わそうだ。
だが、そのように見えてそうではない。
これは、サリンジャーの言葉を借りれば、「純粋にして複雑な愛の物語」なのである。
※先月行われたリーダーズ・ネストでもっとも読みたい本に選ばれた、J.D. サリンジャー「フラニーとゾーイー」のおすすめコメントを、Wさんにいただきました。ぜひご一読ください!