大阪・心斎橋

Bar Liseur

バー リズール

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小説  日々の光


著 者:ジェイ ルービン (著) 柴田 元幸 (翻訳)  平塚 隼介 (翻訳)
出版社:新潮社

太平洋戦争から10数年が経ったシアトル。大学生であるビリーは、ある人物との出会いがきっかけで、自分が記憶していない幼い頃の出来事を知る事になる。

それは牧師である父トムと、彼が愛し、別れた在米日本人である光子との秘密だった。
ふたりを引き裂いたのは日米開戦による日系人収容。そこには更に秘めたる真相があり、現在を生きるビリーと、過去の光子ふたつの目線による2部構成で物語が織り成されていく。

著者は日本文学の翻訳家として村上春樹、芥川龍之介をはじめとした、米文学界では高名な方で、なんと本書が73歳にしての処女小説。
著者ルービン氏の日本への深い理解度は、その筋の権威だけに驚くには当たらないにせよ、その細やかでリアリティ溢れる描写、それでいて翻訳感を感じさせないストレートな文体は「海外小説」というのを忘れてしまいそうになる程だ。

ビリーと、ある女性(それが誰かは大きくネタバレになるので言えない!)とのロマンスは、かつての日本文学の香りを感じさせる官能美があるかと思うと、「赤いシリーズ」を思わせる(笑)彼女の出生や血筋を巡る因縁によって二転三転する展開、それを綴る湿り気を含んだ品格ある筆致など、純文学/通俗系両面においての小説の旨味が隅々まで行きわたり、中盤からは読む手が止まらなくなるほど。

しかし何よりも筆者が怒りを込めて本作で大きく訴えること。それは昔も現在も大きく幅をきかせ害悪すらもたらしている米国の押し付けがましくも偽善的な宗教性だ。
ビリーの父親が牧師であることがまず最初の提示であり、犠牲の象徴となった多くの日系クリスチャン達、甚だしきは長崎・・・

それが一気に凝縮された終章に胸を揺さぶられ、物語の全てが収束するかのような最後の結末にただただ嗚咽。。。

本当にたくさんの方に読んで頂きたい、ルービン氏渾身の一作です。

月並みな感じの邦題が頂けないが、実はこれにも「日本の心」の現れなのが読んで解ってくる。

※先日行われましたリーダーズ・ネストでもっとも読みたい本に選ばれた、ジェイ・ルービン 「日々の光」のおすすめコメントを、Tさんにいただきました。ぜひご一読ください!