その他 ヒーローたちの戦うキモチ~ウルトラマンからワンピースまで
¥1,404円(税込)
著 者:サイゾー
出版社:林 延哉 (著) 高田 明典(著)
ベストセラーコミックを読み、人気アニメや特撮モノを観る人の数は、通常の書物の読者の比ではない。実際に触れなくとも、ほとんどの人は、自らの世代を代表する作品を知っている。それらの作品は、必ずそれぞれの時代精神を反映し、あるいは影響を与えているのだ。『ウルトラマン』から『ワンピース』まで、半世紀にわたる人気作品の物語構造を探ろうとする本書の意図は、十分に納得できる。
多くの作品の主人公は、戦い続ける。彼ら彼女らが「戦う理由」「戦うキモチ」は、決して一様ではないし単純でもない。初期のヒーローであるウルトラセブンでさえ、自らの戦いの大義に疑問を持つ。
時代が下るにつれて、『ケロロ軍曹』、『夏目友人帳』、『はたらく魔王さま!』など、主人公が「戦わない」作品が増えてくる。それは戦後の平和の年数の蓄積と並行しているようにも見える。だが…。
再び潮目が変わって来ている。いかに夢と友情が語られようと、『ワンピース』は略奪を日常とする海賊の話であることは、不問に付される。「交渉と合意形成」が主流だった『妖怪ウォッチ』も、「力づく」の解決が多くなってきた。
そもそも、主人公たちに「戦うキモチ」を起こさせるために誰かが「戦う理由」を語るとき、それはたいてい胡散臭い。若者に、自身を死に追いやる理由を押しつけるさまは、とりわけ醜い。
折しもこの国では、ハヤタ隊員を死なせた贖罪のために地球を守るウルトラマン同様、かつての戦勝国が必ず助けに来てくれるという幻想のもとに、国の根幹を揺さぶる法が、成立した。