酔っ払い、自動筆記の
ように絵を描く。

吉村萬壱さん

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第2回「宇宙人が攻めてきて地球人がぐちゃぐちゃに
なるような話」が認められた喜び

吉村京大新聞新人文学賞は、京大の「自由な学風」から考えて、自由、ノンジャンルだろうなと思いました。少なくとも地方賞のような縛りはないだろうと。

――それで応募して、みごと受賞されたわけですね。

吉村「宇宙人が攻めてきて地球人がぐちゃぐちゃになるような話」が、審査員だった数学者の森毅さんや『ロリータ』などを翻訳されている英文学者の若島正さんといった第一級の知識人に認められたのは、嬉しかったですね。自信にもなりました。この受賞で30代の残りは乗り切った感じです。

――その後、40歳のときに「クチュクチュバーン」で文學界新人賞を受賞されます。

吉村職場の同僚だった三咲光郎さん(1998年オール讀物新人賞、2001年松本清張賞を受賞)から「あんたは文學界がええやろ」とアドバイスされて。多分いい加減に言われたと思うんですけど(笑)、真に受けて文學界に応募しました。

――そして、芥川賞受賞作の「ハリガネムシ」につながっていくわけですが、ちなみにその間、絵は封印されてたんですか?

吉村封印いうか、二十歳の頃から延々と日記をつけてるんですよ。そこによく落書きはしてましたね。それとか、紙切れにガーっと酔っ払った勢いで描いたり。なんかね、小説を考えるときでもビジュアルから入るんですよ。

――例えば「クチュクチュバーン」にはシマウマ男をはじめ、異形なキャラクターがたくさん出てきますが、イメージとして書く前にすべて具象化されてるんですか?

吉村書きながら具体的に頭の中にあるイメージが出来上がっていく感じですかね。

酔っ払うと
絵を描きたくなる

――話を日記に戻しますが、公にされないまでも日記という媒体において、密かに絵は描き続けてこられたんですね。

吉村まあ、落書きみたいなもんですけどね。日記と、あとは小さい紙切れとか、たまに大きな紙に描いたり。基本的に酔っ払ったときが多いですね。酔っ払うとなんか絵を描きたくなるんですよ。

――それは、その時々の思いみたいなものを描きつけるわけですか?

吉村描くときはほとんど何も考えてないんですよ。後で絵を見ても、なんでこんなの描いたのか、自分でもようわかりません。

――なんか、自動筆記みたいな感じですね。

吉村そうです、そうです。だから、創作の合間に気分転換でキャンバスにきれいな絵を描いているとか、そんなんとは全然ちゃうんですよ(笑)。





撮影協力 ドアーズ・ダイニング(Doors Dining)南船場店
http://www.urdoors.com/dining-cafe/
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